琵琶湖の西岸、滋賀県大津市堅田に蔵を構える浪乃音酒造さんの「浪乃音 ええとこどり 純米吟醸 1401」です。「ええとこどり」という純米酒から純米大吟醸酒まで6種をラインナップするシリーズのうちの1本で、「生」と「火入れ」があるなかの火入れバージョンです。2020年7月製造。
浪乃音 ええとこどり 純米吟醸 1401 720ml 1,870円
協会1401のええとこどり
原料米は山田錦で精米歩合は50%と大吟醸クラスの高精米です。酒母は速醸酛で酵母は能登杜氏さんらしく協会1401号です。「ええとこどり」の純米吟醸には901号バージョンもありますが、今回は金沢酵母を選択しました。それぞれ火入れと生があります。アルコール度は15度、日本酒度は+1となっています。もともと生産量の大きな蔵ではありませんが、蔵のホームページでによるこのお酒の紹介では生産量極少量となっています。
桃の香り 果実感と透明感が豊かな味わいに
瑞々しい桃の香りと柔らかな口当たり。口に含んだ次の瞬間、表面から果実感いっぱいの酸が立ち上がって膨らみます。フルーティな酸味は穏やかな透明感を保ちつつ、最後まで味わいの骨格を作ります。この酸味を支えるのが上品ながらしっかりした甘味で、この二つが端正な味わいを作り出しながら、後半にフッと消えるようなキレに結びます。味わいのピークは中盤に。比較的早いキレは清澄な余韻を残します。山田錦と1401の組み合わせらしさと言うべきか浪乃音らしさと言うべきか、透明感のある軽やかさの一方、厚みのある豊かな味わいが気品を感じる姿で両立しています。
3兄弟で醸す 近年は鑑評会でも活躍
文化2年(1805年)創立。十代目蔵元をはじめ3兄弟が釜屋、杜氏、麹屋と役割を分担しながら酒造りをしています。正面にある直売所の体裁は古い町並みの趣きですが、醸造蔵そのものは平成8年(1996年)に建設された鉄骨3階建てのもの。3階に麹室と宿泊室が配置されたレイアウトは最善の機能を追求した自信作で、他の酒蔵からも高く評価されているものだそうです。
この新鋭(24年は経っていますが)蔵を駆使して、全国新酒鑑評会では平成28酒造年度、平成30酒造年度に金賞受賞。23、29酒造年度入賞と近年注目される活躍となっています。杜氏さんは滋賀県ではメジャーな能登杜氏の系譜にあり、現在は次男である中井 均氏が杜氏に就任。第114回能登杜氏自醸新酒品評会(2018年)において出品酒122点中2位を獲得、石川県知事賞を受賞しています。
毎月の特別なお酒はYouTubeで確認を
毎月かどうかはわかりませんが、特別なお酒が直売所で蔵出しされています。このお酒についてはYouTubeでなぜか?”紙芝居形式”で発表されています。もちろんFacebookでも発表されていますが、YouTubeというのは新機軸でしょう。
近江八景「堅田の落雁」の地
滋賀県大津市堅田は琵琶湖の西岸にあり、酒蔵も琵琶湖の間近に位置しています。近江八景に「堅田の落雁」としてあげられている風光明媚なところで、著名な「浮御堂」も蔵のほど近くにあります。この浮御堂は臨済宗大徳寺派に属する海門山満月寺にありますが、浮御堂の建立は「往生要集」を著した源信僧都によるものと伝えられ、浄土教にも通じるものがあるようです。近くには真宗大谷派の寺院があり、浄土真宗では有名な伝承である「堅田の源兵衛親子」の像も建立されています。
実際、このあたりの自然や風景は長い歴史に裏付けられた奥深さがあり、俳人の大峯あきら氏は「琵琶湖周辺が、日本の風土のなかでいちばん自然が深い感じがする」と語っています。