滋賀県の湖西、高島市新旭町に蔵を構える上原酒造さんの特別純米酒、「不老泉 山廃仕込純米酒 参年熟成 原酒」です。平成25酒造年度の仕込みで平成29年7月の製造(詰口)という3年熟成。通称「赤ラベル」と呼ばれる、上原酒造と不老泉を代表する酵母無添加山廃の逸品です。
不老泉 山廃仕込純米酒 参年熟成 原酒 720ml 1,755円
[Hurousen Junmai–shu 3years mature] Brewery:Uehara Brewery Shiga pref Takashima citySpecific designations:Tokubetu-Junmai-shu, Variety of raw rice:Takanenishiki, Degree of rice polishing:60% Pasteurize:pasteurized ,Yeast:natural aspiration ,Yeast starter:yamahai-moto method, Alc%:17-18% Fragrance:nuts, Taste: rich
上原酒造らしさがいっぱい詰め込まれた
使用米はたかね錦。種類豊富な米を使う蔵ですが、たかね錦を使うのはこのお酒だけ。精米は60%。アルコール度は17度以上18度未満。酵母無添加山廃で、上槽は木槽天秤搾りというこの蔵の2つの特徴を併せ持ち、なおかつ3年の熟成を待つという上原酒造らしさをいっぱいに詰め込んだお酒です。火入れはされています。
熟成の濃醇とシャープなキレ味
いかにもの熟成の色づき。黄金色から褐色に振っています。辛味が包み込まれたやさしい口当たり、いっぱいに広がる濃醇さとシャープなキレが一本で味わえる人気の逸品です。ナッツから漬物に近づいた香りとともに、苦味と一体になった線の太い酸と熟成感のある重厚な甘味が口いっぱいにふくらみます。3年の熟成を寝かせたらしいメラノイジンの香味を確かに感じる複雑な旨みの一方で、後味を長く引き過ぎずスパッとキレる鮮やかさがちょっと驚きです。熟成を狙ったのではない、蔵出しできたタイミングがたまたま3年だったというのが、この蔵らしさだと思います。
3年熟成の必然が不老泉
ある意味、滋賀県の酒蔵のお酒としては系統がよくわからないお酒です。もともとは前杜氏である故山根弘杜氏が作り上げ、現在の横坂杜氏に受け継がれたもの。この不思議な成り立ちは、秋田県のささ辰さんが、ブログ”ささ辰酒日記”「訃報 山根弘 杜氏 逝く」(2014年 07月 08日)のなかで解き明かしてくれています。ご一読をお薦めします。このなかで「こだわりのあまり三年寝かせたのではない。3年も熟成してやっと呑めるまでにお酒が整うのだ」という表現を読んで、「なるほど!」とその唯一無二の味わいに至る必然を納得しました。
”新しい技術”としての酵母無添加山廃
酵母無添加山廃とは何だろうと考えます。現在は結構よその蔵でも取り組まれています。これを「酵母添加以前の酒造りを復活した」あるいは、極端には「江戸時代の酒造りを現代に」などと一部で書かれているのは、ちょっと違うだろと思います。それは「山卸廃止酛」の開発年代云々のことを問題にしているのではありません。つまり、現代の酒造技術の地平に立ったところから酵母無添加を展望した技術と見るべきで、どこの蔵でも世間と没交渉で酒造りをしているのではなく、協会酵母も使ってきた歴史のうえで蔵付きの清酒酵母が成り立っているのではないかということです。その上で、この手間と時間とリスクを掛けた「新しい酒造技術」で作り出すお酒の味わいを楽しみたいと思います。