富久錦「祝泡SHU-WA 純米スパークリング」R1BY 兵庫県加西市

兵庫県加西市の純米蔵、富久錦さんの新しいお酒。近年注目のシャンパン製法による日本酒「祝泡SHU-WA 純米スパークリング」です。長年にわたって低アルコール酒や発泡酒に取り組んできた経験を基礎に成立した「ドライ」と「低アル」の両立、日本酒らしい味わいが特徴のお酒です。2021年12月2日発売
祝泡SHU-WA 純米スパークリング 720ml 4,950円

[SHU-WA Junmai Sparkling] Brewery:Fukunishiki, Hyogo pref, Kasai city, Specific designations:no, Variety of raw rice:Yamadanishiki,Kinuhikari Degree of rice polishing:60% Pasteurize: pasteurized ,Yeast:kyokai No.9, Yeast starter:sokujo-moto method, Alc%:13% Fragrance:mango ,Taste:dry

凝ったラベルに力のいれようが現れているようです

瓶内二次発酵 ドライタイプの低アルコール酒

瓶内二次発酵の発泡が特徴のお酒です。原料米は山田錦92%、キヌヒカリ8%という不可思議な組み合わせ。これだけでも興味深々となります。精米歩合は60%。酵母は協会9号酵母、酒母は速醸酛です。令和元酒造年度に醸造したお酒を寝かせて、令和3年の夏まで瓶内二次発酵させた上で、澱を抜いて火入れをするという凝った造り。澱抜きはもちろん手作業によるデゴルジュマン。しかし、何と言ってもアルコール度13度という低アルコールでありながら「ドライ」というところにこそ特徴があります。特定名称表示については不明です。

泡とともに甘味が膨らみドライに切れ上がる

栓を保護する針金を外し、前方後円墳型のコルクを抜き取る緊張感のある作業が必要ですが、静かに冷やしておけば、吹き出ることはありません。開栓とともに立ち上がる香りは穏やかなイソアミル系。南国の果実のような甘い香りです。口に含むと瓶内二次発酵特有の微細な、しかし、意外に強い炭酸ガスの発泡が口中いっぱいに膨らみます。この膨らみに伴う味わいは透明感のあるフルーティーな甘み。薄っぺらなドライ感ではない、たっぷりした旨味が真骨頂です。発泡感の終焉とともに、一転してほのかな酸味を伴って素早いキレに結びます。このスパッとしたキレがドライ感をもたらすのでしょう。炭酸ガスの発泡のなかで、味わいの変化が楽しめるドラマチックな展開に、レベルの高さが伺えます。

様々な特徴が楽しめるお酒

新たに発表となったこの一本には、様々な興味深い特徴があります。

シャンパン製法

もちろん原料と製法の異なるシャンパンと同じということはありませんが、いくつかの類似点によってこのように表現されます。一つには多量の酵母を生かしたまま瓶内二次発酵させることによって特徴のある炭酸ガスを獲得することと、この過程に必要な(必然的に残存する)澱を抜く方法、つまり、デゴルジュマンという瓶口に集めた澱を急冷凍して、瓶内の圧力で抜き去るという方法などということになるでしょうか。近年、いくつかの酒蔵でこれらの製法による発泡性の日本酒が登場しています。発泡性酒に関して、富久錦さんは「BUCU」という発泡性酒を開発してきた経験の蓄積があります。

蔵開き試飲コーナーで先行披露されました。この値段なので飲めた方は幸運です

低アルコール

しかし、13度という低アルコールでありながら「ドライ」で「クリア」に仕上がっているところに、「一体、どのような方法でこんなことができるのか?」という興味が尽きません。もちろん、これは企業秘密でしょう。加水ではありません。酵母も従来型の酵母です。発酵を途中で止めたものでもありません。「醪の過程での細かい調整」というようなお話でしたが、長年にわたって「FU」という低アルコール酒を造り続けきたノウハウの蓄積もあるでしょう。もちろん、製麹、酒母においても何かしらの工夫が積み重ねられていることと思います。糖を食い切っていながら低アルコール、二次発酵のために特殊な濾過もできないという条件をクリアした方法についてはまったく不明です。
参考のために、加水による低アルコール酒「沢の鶴 純米酒SHU-SHU]、新開発酵母による低アルコール酒「菊正宗 天使の吐息

山田錦92%、キヌヒカリ8%

不思議と言えば、この組み合わせと言えるでしょう。値段のとびきり高い地元産山田錦をほとんど使いながら、比較すれば安価な一般米のキヌヒカリをわずか8%混ぜるというところに、このお酒の秘密を解くカギが隠されているように思われますが、こちらはさらにわかりません。味わいながら、ゆっくりと想像をめぐらせてみましょう。

久しぶりの蔵開き

新型コロナ禍で中止されていた「蔵開き」が、2021年11月20日から21日にかけて、久しぶりに開催されました。以前とはいくつかの点、とくに飲食では変更(無くなった)がありましたが、試飲に関しては屋外で、この「祝泡SHU-WA]をメインに実施されました。コロナ禍がはじまって以来、飲食店向け販売がストップするような事態で苦しんできた、ほぼすべての酒蔵にとって「コロナ収束」は待ち望まれることでしょう。しかし、この間にも酒蔵では様々な新たな挑戦が行われており、是非、その成果を味わってもらいたいと思い、できる限りご紹介もしたいと思います。
ただ、実際に造り手さんに会って、お話を聞くのがこのブログのコンセプトですので、コロナ禍でほぼ身動きできなくなりました。その意味からも早々の「コロナ収束」に期待しています。

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