神戸酒心館「福壽 純米大吟醸 創業二七〇周年記念酒」R2BY 兵庫県神戸市

灘五郷のうち御影郷に属する神戸酒心館さんが創業270年記念酒として発売した「福壽 純米大吟醸 創業二七〇周年記念酒」です。宝暦元年(1751年)は前身の安福酒造(福壽ブランド)の創業年です。創業記念と銘打った純米大吟醸酒ですが、お値段は抑えた設定となっています。2021年8月11日発売。直営店とネットで数量限定販売。
福壽 純米大吟醸 創業二七〇周年記念酒 720ml 2,750円

[FUKUJU Junmai-daiginjo 270years anniversary] Brewery:Kobe-shu-shin-kan, Hyogo pref, Kobe city, Specific designations:Junmai-daiginjo-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki, Degree of rice polishing:50% Pasteurize:pasteurized ,Yeast:no disclosed, Yeast starter:sokujo-moto method(High-temperature-saccharification shubo), Alc%:16% ,Fragrance:fluits ,Taste:juicy

神戸市北区大沢地区の山田錦と低温熟成

神戸市北区大沢(おおぞう)地区の山田錦を使用。大沢地区は山田錦特Aの三木市吉川地区に接している地域です。精米歩合は50%と昨今の大吟醸としては低精米タイプ。仕込水は宮水です。酒母は高温糖化酛。酵母は発表されていませんが、こちらでは協会酵母が使われているようです。アルコール度は16度とスタンダードなものです。酸度や日本酒度の発表はありません。ラベルにあるように「低温熟成酒」が一つのコンセプトになっています。

濃厚な果実香と甘味の心地よさ

まずは濃厚な果実香。濃厚ですがフレッシュ系の立香です。口に含んだ第一感は甘味。厚みと質感のある果実的に滴るような透明感のある甘味です。この甘味を強めの酸味が囲むように包んで、はっきりした輪郭を形つくっています。このあたりは、甘味を甘さで終わらせずに、豊かな味わいの造形にしているところがさすがです。甘味が早めに消えながら、酸味は長く残って、ほのかな苦みの助けを借りながら、心地よいキレに結びます。純米大吟醸ですが、味わいの主張が強いタイプのお酒と見受けました。
創業270年記念の記念酒ですが、技術的な頂点を表現するためのお酒ではなく、この蔵の方向性を示すようなお酒に仕上がっているように思いました。

全国新酒鑑評会金賞の常連

創業は宝暦元年(1751年)。江戸時代中期の後半といったところでしょうか。近隣の安福又四郎商店(大黒正宗)と同じく安福家が経営する福寿酒造として「福寿」ブランドを展開していましたが、1995年の阪神淡路大震災で木造蔵が倒壊という厳しい時代を経験されています。この震災によって、灘五郷は甚大な被害を受けて廃業になるところも多く、大きな変化がありましたが、1997年に同じく灘の豊澤酒造とともに、現社名の株式会社神戸酒心館を設立して、数種のブランドを展開しています。以前は但馬杜氏さんが酒造りを担っていらっしゃいましたが、引退とともに社員制度に移行。その後は、高温糖化酛の導入など酒造りのうえでも大きく変化しています。
今年の令和2酒造年度全国新酒鑑評会でも金賞を受賞するなど、鑑評会の金賞受賞の常連となっています。

右側が現在の醸造蔵。

灘の酒蔵の中では、私にとって最も縁の薄い酒蔵の一つです。このためやっと二つ目のご紹介になります。特に理由は無いのですが、膝を突き合わせてお話を聞く機会がなかったためでしょう。一方で、酒蔵見学は常時実施(予約は必要です)されていますし、充実した直売所もあって、「しぼりたて量り売り」というお酒も購入可能(現在は新型コロナ感染対策のため休止)と、かなりオープンな酒蔵ではあります。そのような機会がほぼ絶無である剣菱さんの方が、お話を聞くチャンスがあったというのも不思議なことで、「縁」とはそういうものなのかと思います。

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