毎年、1月から3月に行われる蔵見学のときにのみ限定販売されるしぼりたての原酒です。見学中にきき酒のうえで注文を受けてすぐに瓶詰めし、帰りに引き渡されるという純米の生酒です。大き目の5合瓶になります。2017年2月製造。
白鷹 蔵見学限定酒 しぼりたて原酒 900ml 1,650円
印象 フレッシュにして濃醇な純米生酒
まずは、純米酒ながらリンゴ、ナシ系の吟醸香が香ります。もともとフレッシュな生酒ではありますが、この香りで一気にフルーティな全体像を形作ります。一方で、味わいは、いかにも生酛という厚みある濃醇さ。果実的な酸味が圧倒的ですが、米の甘味がベースに合わさるために、十分な質感と充実感があります。苦味、辛味は抑制的ですが、複雑さを持ったオシ味の後のキレはなかなかに鋭く、さらにフレッシュ感を際立たせます。日々、味が変化するため「帰ったら、すぐに飲んでほしい」というものです。
特徴 生酛の純米という本道がフルーティに
米は兵庫県三木市吉川町の特A地区の契約田で造られた山田錦を70%精米したもの。酒母は生酛で、酵母は協会7号酵母です。泡なしの701号ではなく、7号酵母というのが特徴で、酒母タンクには泡切りが回転しています。アルコール度は18度。酸度やアミノ酸度、日本酒度は不明です。仕込水は宮水。宮水地帯に最も近い酒蔵で井戸から蔵まで直汲できるという立地になります。しぼりたての澱引き前の無濾過原酒ですが、澱がからむことはない清澄な色合いで、あらばしりやせめではなく、中取りの部分かと思います。製品のほとんど、大吟醸以外を生酛で造るという稀有の蔵ですが、酛摺は人力ではなく機械で(Facebookを見ると「人力」で、それこそ必死で酛摺りされてますので、全量かどうかはわかりませんが、やっぱり人力なのかな)蒸米は連続蒸米機、製麹も一部大吟醸などを蓋麹で造る他は自動製麹機を使っています。灘の中では大手ではなく、製造部門も7~8人と少人数のため機械化、省力化されていますが、これとは逆に、手作り感がいっぱいに溢れているのは不思議なところです。これは創業以来、量を追わずに高級酒に特化した酒造りをしてきた伝統でしょうか。地元西宮では、特別の日の酒は白鷹という評価になっています。
唯一、神宮御料酒を拝命する酒蔵
大正13年から伊勢神宮の御料酒に指定されています。これは毎日行われる神事として神様に食事を奉るときに供される酒ということで、毎日1升がささげられます。このおよそ年間350本に加え、年末年始にさらに数百本という酒が伊勢神宮に送られています。ただし、これはあくまで奉納のため、酒税分以外はお金はもらえないそうです。この献納は戦中戦後を通じて絶えることなく行われており、戦後の混乱期は社員が酒を担いで近鉄電車に乗って届けていました。神様にささげる品のため床に降ろすこともできず、ずっと担いだまま。更に、酒が極度に不足していた時代で、闇屋に見つかれば脅され、奪われそうになるのを必死で守って届け続けたと伝えられています。このお酒は原料から製造の作法、保管方法まで細かく指定されており、蔵の上槽場に「伊勢神宮御料酒庫」が設けられています。