丹波市市島地区の山名酒造さんが篠山市の契約田で栽培する酒米「野条穂(のじょうほ)」を使った純米吟醸酒です。平成29年9月製造。
奥丹波 野条穂 720ml 1,836円
復活した「野条穂」を明利酵母で
昭和8年(1933年)に兵庫県で誕生し、一時は消滅していた酒米「野条穂」を使っているのが特徴。精米歩合は60%。酒母は速醸で酵母は明利酵母です。アルコール度は16度で日本酒度は+2となっています。
口当たりからキレる渋味苦味と硬質なコク
「キレ味鋭い口当たりとコクのある旨み」がラベルに書かれたフレーズ。「口当たりからキレてどうする?」という話ですが、そのとおりの印象。口に含んだ瞬間に感じるほのかな甘味と鋭く突き抜ける酸味。甘みはフワリと消えて、渋味、苦味、辛味で引き締まります。「シマるシマる」喉越しに感じる渋味と苦味。シャープにキレますが、軽快というものではなく、その後に硬質なコクが凝縮した後口となって余韻を残します。あえて言うと、日本酒を飲み慣れている人向き。いきなりコレは結構キツイかも知れませんが、慣れるとこの締り方がたまらなく、飲み続けてしまいます。なお、香りは輪郭のはっきりした吟醸香です。
平成13年に栽培が復活
野条穂は昭和8年(1933年)に兵庫県農事試験場で、奈良穂の変種を純系選抜して誕生。兵庫県内で広く栽培されていましたが、昭和40年代には他の酒米の作付けの拡大と入れ替わるように縮小しました。いずれも悍長が長く倒伏しやすい性質で栽培が難しいことから、同じ難しいなら人気があり利益の上げられる山田錦や比較的栽培のしやすい五百万石などに代わっていったことも当然であったと思います。昭和40年代には栽培が途絶えていたものを、平成13年(2001年)に復活。現在は、加西市野条町で生産された野条穂を使う姫路市の田中酒造場「喜縁」、明石市の自社栽培米を使う明石市の太陽酒造「神稲(くましね)」と併せ3つのお酒が造られています。
甘味が表立たない硬質な印象は共通するものの、この3つのお酒の性格はかなり異なっています。「喜縁」は豊醇、「神稲」は野生的に対して、「奥丹波 野条穂」はシャープと言ったところでしょうか。