2015/4/7投稿記事 滋賀県発祥の酒米、山田錦の父株である「短稈渡船」を100%使った、純米吟醸の生原酒です。
特徴-わずかな種籾から「短稈渡船」を復活
「短稈渡船」は言わずと知れた山田錦の父株です。母株「山田穂」との間に兵庫県農事試験場で1923年(大正12年)に人工交配で誕生した山田錦は、その後、代表的酒米としての道を歩みますが、それと入れ替わりに短稈渡船は発祥地滋賀県でも作られなくなりました。
これを僅かに残った種籾から4年の歳月を掛けて復活。契約農家によって栽培された米で造られたのが今回のお酒です。
精米は60%でアルコール度は18度の生原酒です。杜氏さんは能登杜氏。酵母は1401号です。酒母は速醸だと思います。
印象 クラシックな硬派
味を表現するなら「今どきの味じゃない」という感じ。ラベルには「やわらかな香り 味わい深いやや辛口」となっていますが、パンフレットに書かれた「野生種に近い酒米ならではの力強く深い味わい」の方が当を得ていると思いました。昨今の「ふっくらやさしい」味ではなく、かなり硬質でシャープな印象です。協会1401酵母ですが、香りは低く、甘さがなく、酸味も少なめ。山田錦と飲み比べると、山田錦の奥に隠れている原始の記憶を鮮明にした印象です。まず、居酒屋に並ぶことはない種類のお酒ですが、日本酒マニア向けの1本です。結構、感動します。
復活「渡船」の来歴
渡船には他に「滋賀渡船6号」という酒米もあり、滋賀県内のいくつかの酒蔵で使われています。この関係ですが、元に福岡県産「渡船」があり、これから純系分離法により「滋賀渡船2号」「滋賀渡船4号」「滋賀渡船6号」が育成された。このうち「滋賀渡船2号」が「渡船2号」となり、これが「短稈渡船」として山田穂と交配され山田錦が生まれた。一方、「滋賀渡船6号」も生産されなくなっていたものを平成16年からJAグリーン近江酒米部会などにより栽培が試みられ復活。という流れかと思います。ただし、福岡県産「渡船」=「雄町」ではないかという説もあり興味は尽きません。
新嘗祭の白酒・黒酒の醸造元
こちらは藤居本家の販売所です。最初は「町役場か公会堂?」と思ったほどの総檜づくりの巨大な建物。お酒の直売所としては明らかにオーバースペック。駐車場奥のトイレ棟は博物館並み。創業は天
保2年。主家、書院、東蔵は国指定登録有形文化財です。きっと、地域の大地主で名門なんだろうと思っていたら、実際、そのようで「新嘗祭御神酒 白酒・黒酒 謹醸元」と書かれていました。白酒(しろき)、黒酒(くろき)は万葉集にも記述のある古代の酒で、新嘗祭には古代の製法が再現されたものが供されると読んだことがあります。どのようなものでしょう?練酒のようなペースト状のものなのでしょうか?どのような製法によるものか?機会があれば伺ってみたいものです。
旭日 純米吟醸 短稈渡船二号 生原酒 720ml 2,376円
藤居本家 滋賀県愛知郡愛荘町長野 793