竹内酒造「香の泉 農民 特別純米原酒」R1BY 滋賀県湖南市

滋賀県湖南市の竹内酒造さんが醸造する「香の泉 農民 特別純米原酒」です。このお酒は農民団体が原料米を提供のうえ、製品は全量買い取って自ら消費するというもの。このため、通常の流通には乗りませんし、蔵での販売もありません。2019年12月製造。
香の泉 農民 特別純米原酒 720ml 値段は不明

[Kano-izumi Noumin(Farmer) Tokubetu-junmai-shu] Brewery:Takeuchi syuzo, Shiga pref, Konan city, Specific designations:Tokubetu-junmai-shu, Variety of raw rice:Nihonbare, Degree of rice polishing:60% Pasteurize:pasteurized ,Yeast:unknown, Yeast starter:unknown method, Alc%:17% Fragrance:fluity ,Taste:rich and fluity

自ら栽培した”日本晴”で全量買取り

滋賀県の稲作農家の方からいただいたお酒で、この場を借りてお礼申し上げます。このお酒は農民団体が自ら栽培した日本晴を持ち込み、竹内酒造さんで醸造、ボトリングしたものを全量買い取るというもの。品種は日本晴になります。精米は60%です。特定名称表示は特別純米酒でアルコール度は17度の原酒となっています。これ以外は不明です。

芳醇で端正な味わい

まずは果実的な甘い香り。立ち上がりは早く、”ひや”ではフルーティな酸味と穏やかな甘味が流れるように広がります。それぞれ、味わいの輪郭がはっきりしています。少し温度を上げてぬる燗から上燗に。酸味と甘みが溶け合いながらバランスして旨味を膨らませながら、いずれも酸味を残しながらゆっくりキレて、綺麗な後味を余韻にします。成り立ちからは濃厚な味を予想しましたが、芳醇ながら上品で端正な姿お酒でした。
「農民」という端的なネーミングですが、以前は「農民一喜」という名称であったように記憶しています。ところで、私の知る農家の方々は(高齢であるほど)ヘビーユーザーが多く、このように事前に飲み手がわかるお酒では、ヘビーユーザー向きの濃~いお酒かと想像していました。最近はユーザーの嗜好が変化しているのでしょうか。瓶やラベルもモダンな意匠になっています。

琵琶湖の東岸、湖東地域の農地、近江八幡市あたりの1月の風景。後背に見える比良山系から琵琶湖上を抜けた寒風が吹きつける。

”鮒寿し””もろこ”と合わせてみた

こうしたお酒は地域の特色ある食べ物と合わせたいもの。滋賀県あるいは琵琶湖の特産といえば”鮒寿し”でしょう。かなり強烈な味と香りは好き嫌いが割れるもの。地元でも「食べれない」という人は結構な数存在します。ベストマッチかどうかはわかりませんが、このお酒は発酵食品である”鮒寿し”を包み込んで味わいを高めます。また、琵琶湖を代表する湖魚である”もろこ”にもバランスよく寄り添います。

綺麗には盛り付けられませんでしたが、実際に試してみました。

 

飲み手の顔が見える酒造り

一般市場での販売を前提にしないで、飲み手の顔や嗜好が見えるという酒造りはうらやましい限りです。原料を自ら作れる稲作農家の特権ですが、こうした形態は全国的には点在するのではないかと想像します。ネットを検索しても出てはこないので、実際にお住まいの地域で実地に調べてみるのも面白いのではないかと思います。香味に地域性がたっぷりと現れたお酒に出会えるかも知れません。
一方で酒蔵の規模が小さいため、米は地域で調達し、販売もほぼ地域で完結するところもあるでしょう。私の知る酒蔵は高齢の蔵元杜氏が一人、年明けから酒造りをはじめ、村民に販売しながら村の秋祭をもって完売しています。「体がきついので辞めたいが、祭りもあるし、楽しみに待っている人がいるので辞められん」。
もちろん、今回の酒蔵は全国新酒鑑評会金賞受賞の常連でもあり、全国規模で展開する酒蔵です。

東海道五十三次「石部宿」。旧東海道に面した酒蔵。

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