中澤酒造「一博 純米吟醸 生酒」27BY 滋賀県東近江市

東近江市五個荘に蔵を構える中澤酒造さんの「一博 純米吟醸 生酒」です。27BYですが、一年半以上寝かせて、平成29年10月に蔵出しされました。
一博 純米吟醸 生酒 720ml 1,720円

Kazuhiro Junmai-ginjo Nama-zake] Brewery:Nakazawa Brewery, Shiga pref, Higashiohmi city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki, Degree of rice polishing:55%  Pasteurize:no pasteurized  ,Yeast:Kyokai No.14 ,Yeast starter:sokujo-moto method, Alc%:16-17%  Fragrance:apple  Taste:fruity and rich

滋賀酒らしい吟醸の生酒

原料米は滋賀県産山田錦を全量使用。この山田錦は近隣の畑酒造さんと同じく「呑百笑の会」が生産した<環境こだわり農産物>です。精米歩合は55%。アルコール度は16度以上17度未満。日本酒度は+2.5、酸度は1.7となっています。酒母は速醸で酵母は協会14号という滋賀県のお酒らしいお酒です。「一博」の名は蔵元杜氏である中澤一洋氏が教えを受けた二人の能登杜氏、坂頭宝一杜氏と谷内博杜氏からとったもの。

フルーティな豊かさと穏やかな熟成感

ほのかな吟醸香と果実的で鮮やかな酸味と柔らかな甘味が9割。1年半寝かされたメイラード反応によるであろうナッツ様の香りとほろ苦い味わいが1割。この二つが合わさる芳醇で旨味ある膨らみに続いて、意外なほど素早くキレて、ホロ苦い余韻とわずかな甘味を残します。14号酵母にしてはエッジの効いた酸の立ち上がりと、低温熟成らしい穏やかな熟成の進行がフルーティともドライとも言える特徴のある姿を見せてくれます。

自社製造を再開して4年の人気蔵

五個荘町と言えば、近江商人が思い浮かぶ土地柄です。この蔵の創業は1948年になります。しかし、2000年には自社での製造を停止、現在の代表取締役兼杜氏である中澤一洋氏は同年10月より同じ東近江市の畑酒造さんで修行開始。2004年10月から畑酒造の設備を借りて新銘柄「一博」の製造をはじめます。2015年に自社には復帰して11月から醸造を再開しています。ラインナップには生酒が多いようです。

畑酒造の設備を借りて実力と人気を蓄える

実は畑酒造での製造時期から結構な人気があり、方々で名前は聞いていましたので、まさか自社製造していなかったとはしばらく知りませんでした。この人気も、熱烈なファンに支えられたもので、そうした人たちからこの蔵の存在を教えてもらったものです。実際に自社製造への切替えも、年々製造量が増えていくなかで、「これ以上、畑酒造さんの設備を占領するわけには行かない」ということでの決断であったようです。自社設備での製造再開からわずか4年ですが、今や滋賀県内でも屈指と言ってよい人気蔵となっています。
それにしても設備の使用を許し、酒造りのノウハウも伝授するという畑酒造の畑大治郎さんも、ずいぶんと懐の深い人物です。私の住む兵庫県内でも他社の設備を借りながら、いつか自社への復帰を念願しながら醸造を続けている蔵が複数ありますが、この成功は大きな励みになることでしょう。

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