「播州赤穂」と言えば忠臣蔵。赤穂市内に唯一残る酒蔵、奥藤商事さんの「忠臣蔵 純米吟醸 47(QUATRESEPT)」です。「47」は赤穂浪士の47士に由来するもので、なぜかフランス語読みで「QUATRESEPT」(キャトルセット)です。平成30年(2018年)6月製造の生酒です。
忠臣蔵 純米吟醸 47(QUATRESEPT) 720ml 2,268円
精米を47%とした純米吟醸生酒
原料米は兵庫県産の山田錦。精米歩合はネーミングに合わせて47%となっています。アルコール度は16度で日本酒度は-2となっています。酸度は1.9です。酒母は速醸酛ですが、酵母は不明です。とは言っても香気性の吟醸酵母であることは確かで、酒販店さんのホームページで広島酵母となっているものもあります。平成25醸造年度からの新シリーズ。
ザックリ果実感たっぷりの酸味
果実感たっぷりのあふれる酸味とフレッシュ感を味わうお酒です。
リンゴ系と甘やかな果実系の香りが立ち上がり、含み香がめぐります。味わいを支配する果実感あふれる酸味が口当たりから濃厚に広がります。ツルリと滑らかな表面ではなく、しっかりとした舌触りを感じるところが核心となって心地よさを感じます。この酸味に包まれた甘味が徐々に膨らんで、フルーティな濃醇さをつくりだします。蔵の表現は「華やかな香りとしっかりした味わいが特徴」。キメ細かなバランスではなく、ザックリとした力強さとスッパリとしたキレ味を楽しめる吟醸酒です。
このお酒はこれまでの「私たちが目指すのは、淡麗辛口のようにさらっと飲めるお酒よりも、『飲みごたえ』のある豊かな味わいがあるもの。アルコール度数が高めでガツンとボリュームあって、それでも『もう一杯』と言いたくなる後味のよさ、そんなお酒を目指しております」という忠臣蔵の雰囲気から一歩離れた先にあるお酒です。
農大出身の蔵元とご子息の体制
かつては酒造季節に但馬杜氏が来ていました。その後、平成元年(1988年)に東京農大出身の蔵元が蔵に戻られ、蔵元杜氏として季節にやってくる蔵人さんとの2人体制で酒造りをされていました。農大と言っても醸造学科ではなく林学科で、法面保護工事の会社に勤務していたそうで、酒造りは一からのスタートでした。平成26醸造年度からは蔵元さんに加え、農大を卒業した息子さんとその同級生という3人体制だそうです。全国新酒鑑評会では平成14、22、23、24酒造年度で金賞、今回、平成29酒造年度で入賞となっています。
1601年創業 瀬戸内海の廻船業から
この蔵のある赤穂市・坂越(さごし)は瀬戸内海に面した港町。関西では料亭などで出される高級な牡蠣と言えば「坂越の牡蠣」として知られた地名ですが、町の風情が漁師まちとは異なった雰囲気です。というのも、かつて瀬戸内海の交易を支えた廻船業で、幕末から明治には塩の積み出し港として栄えた面影を残しているためで、今も往時を偲ばせる屋敷街が残っています。このなかでもとりわけ大きな屋敷を構えるのが奥藤家で、廻船業で財を成して慶長6年(1601年)に創業と県内はもとより全国でも有数の歴史があります。この歴史に残された文物は酒造郷土館という形で展示されています。
忠臣蔵は観光のお土産用みたいなベタなネーミングですが、今や赤穂市の酒蔵がただ1軒となったという現状から、忠臣蔵の名前を背負って立たっています。長い歴史のなかで赤穂浅野家の御用酒蔵であったという経歴もあります。