_兵庫県加西市の純米蔵、富久錦さんの「純青 兵庫夢錦 生酛純米吟醸 無濾過直汲み」「純青 兵庫夢錦 生酛純米吟醸 おりがらみ」28BYの2本、平成28醸造年度純青サポーター第1回頒布の新酒2本です。
These are “Junsei Hyogo Yumenishiki Kimoto Junmai-Ginjyo Non-Filtration Direct Drawing” and “Junsei Hyogo Yumenishiki Kimoto Junmai-Ginjyo Sediment” produced by Fukunishiki Brewery located in Kasai City, Hyogo Prefecture. The raw material is 60% polished Hyogo Yumenishiki. It is fermented by a complicated traditional method called “Kimoto”. Yeast adds Kyokai 901 and other yeast. Two were squeezed from the same tank. From the same moromi (raw unrefined sake), it is a challenging attempt to create sake of two different flavors by changing the process and timing of squeezing.
特徴 同じ醪から二つの個性を作り出す挑戦
_加西市の豊倉町営農組合契約栽培の兵庫夢錦を60%精米した純米吟醸生酒です。アルコール度は17度と原酒としては低め。昨年までは65%精米の純米酒で速醸でしたが、今回から精米歩合を上げて生酛の吟醸に変更されています。酵母も変更され、協会901号を基本に何か手が加わったようです。2本は同じ醪からしぼられたもの。醪は同じものながら、搾りから瓶詰めのプロセス・タイミングに変化をもたせることで、違った特徴のお酒にして、セットで提供するという挑戦的な試みです。
印象 「シャープな輪郭」と「ソフトな広がり」
_まず「純青 兵庫夢錦 生酛純米吟醸 無濾過直汲み」ですが、さわやかなリンゴ様の上立香が広がります。微細な発泡感を伴った口当たりもしっかりした質感があり、はっきりした酸と土台になる甘味が厚みを持った核になっています。フルーティ感もシャープで、輪郭が鮮やかな印象です。この吟醸らしい香りと十分な旨みも、綺麗な酸でキレていきます。
_一方の「純青 兵庫夢錦 生酛純米吟醸 おりがらみ」は、比較的おだやかな上立香。発泡感を伴いながら、すべるように口中に入り、若干の麹香を伴ってまったりとふくらみます。丸みを帯びた酸とくどさのない甘味がゆっくりと広がる印象です。最後にホロリとした苦みでキレていきます。
_昨年の速醸から生酛に変わった効果は、このしぼりたての段階でそれほどはっきりしていないかと思いますが、余韻に残る「ゴク味感」に片鱗が伺えます。
_いずれにしても、これほどの違いが出せることは、驚きですし、奥深さを感じるところです。
純青サポーター制度で、年3回6本の提供
_純青は富久錦の新しいブランド。サポーターと一部契約酒販店で販売されています。サポーター制度は今回で4回目になります。11月末までに会費10,000円で申し込むと、12月上旬、3月上旬、8月中旬にそれぞれ2本(720ml)が提供されます。ラインナップは提示されますが、前回に続き変更がありました。今年もこの6本でどのようなストーリーを見せてくれるのか楽しみです。なお、純青酒粕と伊藤岱玲作のオリジナル杯が付きます。
_毎年、テーマを決めています。昨年は「発酵による美しい酸とそれぞれの米の旨みを感じるお酒」でしたが、今年は「先人の英知に挑む~丸みのある酸と奥行きのある味わい~」になっています。「先人の英知に学ぶ」とは生酛造りへの挑戦。「江戸時代から伝わる古式醸造法(生酛造り)と近代的な酵母菌に濃度的なストレスをかけない発酵スタイルの融合(富久錦流古式醸造法)」ということで、これは酵母のアルコール耐性か濃糖圧迫の問題かなと想像したり、17度という低いアルコール度が関係するのかと思ったりしています。
_生酛そのものが特に珍しいわけではありませんが、速醸しか造っていなかった蔵で生酛を造るのは、確かに失敗の危険が伴う挑戦で、天保10年(1839年)創業の伝統蔵でありながら、最近、この蔵が”なぜか”若々しく感じるのは、比較的若い杜氏さんをはじめ、酒造りに携わる蔵人さん、蔵元さんの精神に由来するものでしょう。次は何を見せてくれるのでしょうか。
純青サポーター 10,000円(税別)
兵庫県加西市三口町1048