千年一酒造「純米吟醸 郁 KAORI」R1BY 兵庫県淡路市

淡路島に2軒ある酒蔵の一つ、北東岸の東浦地区にある千年一酒造さんの「純米吟醸 郁 KAORI」です。カタログに載るレギュラーのラインナップではなく、数量限定で醸造されるお酒で、蔵出し当初には無濾過生バージョンもあるようですが、こちらは火入れです。2020年7月製造。
純米吟醸 郁 KAORI 720ml 1,980円

[Junmai-ginjo KAORI] Brewery:Sennenichi Brewery, Hyogo pref, Awaji city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Gohyakumangoku ,Degree of rice polishing:55% , Pasteurize:pasteurized ,Yeast:Kyokai1801 ,Yeast starter:Sokujo-moto method, Alc%:16%, Fragrance:Muscat, Taste:fruity

自家製五百万石を1801で

カタログにもWEBページにも載っていないお酒です。原料米は全量淡路島産の五百万石。精米歩合は55%です。酒母は速醸酛で酵母は協会1801号です。アルコール度は16度で、酸度やアミノ酸度の表示はありません。その他の内容はほぼわかりません。ところで、五百万石の純米吟醸としてはかなり高い値付けですが、これは自家栽培の米にかかる費用と、市場で捌くためのお酒ではなく、購入するユーザーの顔が見える販売チャンネルという特徴によるものと推察します。

マスカットの香り 甘酸っぱい味わい

まずは穏やかな果実香、マスカットのような香りが立ち上ります。1801号酵母としては派手な香りではありません。口に含むと柔らかで果実的な酸味が舌先を包み、この広がる酸味が終始通底します。五百万石らしい締まった甘味は酸味を抑えつつ、一体になって爽やかな甘酸っぱさを感じます。味わいのピークは前半にあり、周囲に按配されたほろ苦さを伴って比較的早いキレに結びながら、甘酸っぱい後味と余韻の記憶を残します。

入口は海側に回り込んだところに。

淡路産米の挑戦

この五百万石は地元の田圃で酒蔵が生産したもの。説明によると、何年か前からの取り組みとして、こちらの蔵のファン(あるいは会員?会員制度があります)が参加して田植えから米を育てたものだそうで、「淡路島で五百万石を育てる」というのも一つのテーマであったようです。現在は山田錦の島内栽培にも挑戦していて、3年目となる令和元酒造年度には実醸造に到達したとのことで、こちらは純米酒として少量ながら販売されています。兵庫県内でも五百万石の生産地は日本海側の北部に偏っており、温暖な淡路島での生産の動きは見られなかったように思います。さらに、山田錦は県内の中山間地が主要な生産地であり、日照の多い瀬戸内海沿岸部での生産の試みは、「育ち過ぎて背が髙くなって倒れる」という話を聞いていましたので、これも新しいチャレンジでしょう。

酒蔵見学は通年実施されており、観光バスのコースにもなっています。

「宮水と同質の鍾軌山の山水」

明治8年(1875年)創業。北淡路の大阪湾に面した東浦地区にあり、「海の見える小さな酒蔵」という紹介どおり、酒蔵のすぐ裏手は海になっています。すぐ近くには海水浴場もあるという立地です。仕込み水は淡路島の脊梁山脈を下ってきた「宮水と同質の鍾軌山の山水」という発酵力旺盛な中硬水。この恵まれた条件のもとで、「手造りにこだわり伝統の技を頑なに守りながら常に誠実をモットーに高品質」という酒造りは但馬杜氏さんが支えています。

淡路島の脊梁山脈から東浦方面(左側)とその先の大阪湾を望む。

全国新酒鑑評会金賞

山田錦の38%精米というトップブランドの「大吟醸 千代の縁」は平成11、12、22、23、26酒造年度全国新酒鑑評会金賞受賞。このうち26BYの金賞受賞酒は実際に飲んでみました。当時のメモには「フルーティな甘みがグッと広がる夏蜜柑のような質感のある味わい」と記されていました。

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