都美人酒造「山廃純米 雲乃都美人」28BY 兵庫県南あわじ市

淡路島の南部、兵庫県・南あわじ市にある都美人酒造さんの「山廃純米 雲乃都美人」です。28酒造年度に醸造、火入れされて1年の熟成を経て、平成30年3月に製造されました。29BYの「山廃純米 雲乃都美人 無濾過生原酒」も同時に販売されています。
山廃純米 雲乃都美人 720ml 1,350円(内税)

[Kumono-Miyakobijin yamahai-junmai] Brewery:Miyakobijin Brewery, Hyogo pref, Minami-awaji city,  Specific designations:Junmai-shu, Variety of raw rice:Gohyakumangoku, Degree of rice polishing:65%  Pasteurize:pasteuraized,  Yeast:Kyokai No.901, Yeast starter:Yamahai-moto method, Alc%:15-16%,  Fragrance:,  taste:rich

五百万石、山廃仕込の純米酒

兵庫県産五百万石を65%精米した原料米です。山田錦バージョンは「風乃都美人」となっています。酵母は協会901号酵母でアルコール度は15度以上16度未満。日本酒度は+3~4となっています。「槽掛け天秤搾り」が名物になっていますが、こちらのお酒はヤブタだと思います。酒母は山廃酛。こちらの蔵は能登杜氏さんなので、能登流山廃ということになるでしょう。濾過処理はされていますが、「極力おさえています」という味わい(風味)重視のお酒です。

正面入口から雰囲気のある事務所棟を望む。

能登流山廃らしい旨味あふれる酸

ほのかに香ばしい香り。まずは能登流山廃らしい質感のある酸がいっぱいに広がります。この旨味をたっぷり含んだ酸が全体の骨格をつくりながら、柔らかい甘味と一体となって芳醇な味わいを膨らませます。ガツンとくる荒々しさは抑制されて、丸みを感じるのが特徴。口当たりからいろいろと変化はせず、しっかりと太い味わいがキレを結ぶところまで続き、燗をつけても骨格を崩すことなく、酸や旨味が軽やかに膨らみます。「無濾過生原酒」ではフレッシュな角が立ち、それがインパクトのある特徴にもなっていますが、こちらは1年の熟成を経た山廃らしい滑らかな丸みと奥行きが魅力になります。川の流れが広がりながら海に消えるように、酸を残しながらゆっくりキレて比較的長く後味を残します。

淡路島なのに「都美人」とは?

南あわじ市は兵庫県内では最も温暖な気候で、冬の気温の高低が酒造りの苦労にも影響を与えるようです。蔵内に4本ある井戸からは淡路島最高峰を水源にする硬水が汲み上げられます。昭和20年に創業という新しい酒蔵ですが、これは淡路島南部の10蔵が合同して会社を立ち上げたもので、酒造りの歴史ははるかに遡ります。このうちの一つのブランドが「都美人」で、元々は京都・伏見の酒蔵が持っていた商標を取得したものだそうです。なお、「島美人」というブランドは灘・西宮郷にあります。やっとこの名前に納得しました。木造の建物がたくさんありますが、これもその時に移築したものだそうです。

「槽掛け天秤搾り」が象徴の中堅酒蔵

現在の醸造設備やボトリング、貯蔵設備は新しい建物に移っており、6人の杜氏蔵人さんが、年間におよそ1升瓶で80,000本と言いますから、800石を生産しています。淡路島南部という地域から想像するよりは大規模で近代的な酒蔵で、兵庫県内でも灘の大手に継ぐ規模となっています。
その中で、平成13年に復活した「槽掛け天秤搾り」が蔵の象徴的なものになっています。これは立派な巨木の竿をテコにして1トンの石の重みで酒袋の詰まった槽に圧力をかけるというもの。石の位置をずらすことで圧力を調整しながら上槽できるものですが、これほど規模の大きい現役の装置はまず目にすることはありません。

「木槽天秤搾り」の槽場。この大きな規模は一見の価値があります。

農口杜氏のもとで修行した能登杜氏

酒造りを率いるのは京都府出身の山内邦弘杜氏。異業種で働いていたところ、酒造りがしたいと石川県の酒蔵に飛び込み、「常きげん」ブランドの鹿野酒造さんで農口尚彦杜氏の元で修行。能登杜氏として10年前に都美人酒造に赴任して来られました。

恒例の蔵見学会で挨拶する山内杜氏。

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