大阪府の北部、豊能郡能勢町にある秋鹿酒造さんの「秋鹿 山廃純米 山田錦 無濾過生原酒」で、2019年1月に上槽、1年の熟成を行ったものです。生と火入れの2種類がありますが、今回は生バージョンです。ところで、このお酒は販売店さんによって少しづつ名称が異なっており、とりあえずこの名称にしています。酒販店さんによっては「山田錦」が前に出たり、「へのへのもへじ」が間に入ったりしています。2020年3月製造。
秋鹿 山廃純米 山田錦 無濾過生原酒 720ml 1,750円(税抜き)
「へのへのもへじ」の山田錦
原料米は自営田において無農薬・循環農法で栽培された山田錦を全量使用しています。この「自営田・無農薬・循環農法」米のお酒には「へのへのもへじ」のマークが入っています。精米歩合は70%。酒母は山廃で酵母は協会7号酵母です。もろみ日数は28日と純米酒としては長めの感じ。アルコール度は17度、日本酒度は+9、酸度2.6、アミノ酸度1.8と”何か”を期待させる値となっています。上槽は2019年1月で生のまま1年余りを置いて2020年3月の製造となっています。
米の力、独特の硬派な味わい
充実の味わいなのに重くならない”軽み”は独特です。まずは、口当たりから一拍置いて酸味が力強く膨らみます。滑らかで丸みのある太い酸味は山廃らしいところ。その中に米の甘味を包み込んで、熟成感のある香ばしい香りが旨味をさらに膨らませます。米の力と言うべきか山田錦らしさと言うべきか、しっかりした骨格と味の詰まった質感が、スッパリと切れ落ちるキレと相まって、この蔵独特の硬派で充実した味わいに向き合わせてくれます。生酒ですが、温度を上げながら上燗まで、酸の表情を変化させながら様々に楽しませてくれます。
「農醸一貫」の看板を掲げて
明治19年(1886年)創業。大阪府でとりわけの人気蔵。日本酒好きな人たちにファンが多いと思います。平成15年(2003年)から全量純米酒になっていますが、ここに特徴があるのではなく、蔵元杜氏を勤める社長の下で蔵に掲げられた「農醸一貫」の看板が示す自営田での米作りからスタートする酒造りにこそ独自性があります。もちろん昨今は自営田での米作りは特に珍しくはありませんが、平成7年(1995年)にはじまった無農薬栽培から、平成24年(2012年)には循環農法という「米糠の抑草効果」と「米糠を中心とした発酵堆肥」による米作りに取り組むところに特徴があり、こうした米作りは、酒造りの設計から逆算した米作りと、作り上げた米を基礎にした酒造りの両方向を一貫するもので、「そうでなければ自ら米を作る意味がない」という酒造りです。
多大な労力をかける自営田
4~5年前には自営田は11ヘクタールほどで、全量を自営田ではまかないきれないことから、「全量自社米使用の純米蔵」を目指して自営田を増やし続けています。しかし、「米糠の抑草効果」はあるものの、夏場には草引きの作業がたいへんで、「ひととおり草引きが終わったころには、最初に引いた田圃の草引きにかからないといけない」という状態だそうです。そうした苦労を”モノともしない”(と見える)攻勢的な姿勢は「農醸一貫」の酒造りに対する確信であり、そうして造られたお酒の独自性が多くのファンを引き付けている要因でしょう。