小山本家酒造 灘浜福鶴蔵「空蔵 山田錦 純米大吟醸」30BY 兵庫県神戸市

神戸市東灘区、灘魚崎郷に蔵を構える小山本家酒造 灘浜福鶴蔵さんから新たに発売された「空蔵 山田錦 純米大吟醸」です。空蔵は阪神淡路大震災後にスタートしたブランドで、特約店限定で流通しており、今や灘浜福鶴蔵を代表するブランドに成長しました。また、新発売の純米大吟醸のシリーズは「山田錦」「雄町」「愛山」の原料米違い3種で展開しています。
空蔵 山田錦 純米大吟醸 720ml 1,760円

[Kuzou Yamadanishiki junmai-daiginjo] Brewery:Koyama-honke Nada-hamafukutsuru Brewery, Hyogo pref, Kobe city, Specific designations:Junmai-daiginjo-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki ,Degree of rice polishing:45% , Pasteurize:pasteurized ,Yeast:no disclosed ,Yeast starter:Sokujo-moto method, Alc%:16%, Fragrance:apple,Taste:fruity and rich

常設の見学通路から蔵見学ができます。

精米45%の山田錦バージョン

原料米は兵庫県産山田錦を100%使用。精米歩合は45%です。酒母は速醸酛で酵母は複数の協会酵母をブレンドしているようです。加水されてアルコール度は16度、日本酒度は+2で酸度は1.7となっています。毎年1月に仕込みはじめるもので、このお酒は平成30酒造年度の火入れ。令和元酒造年度のお酒は、今後まず生原酒として4月あたりに発売となりそうです。

見学通路の最後は麹室で、小さな窓から中が伺えます。

フルーティーな酸がかけめぐる

熟したリンゴ系の香りが華やかに立ち上がります。口当たりからフルーティーな酸が口中をかけめぐり、豊かな含み香とともに全体像をつくります。山田錦らしい輪郭のはっきりした整ったプロポーションですが、中に包まれた柔らかい甘味が奥行きと厚みのある味わいを作り出しています。最後までこの酸味が衰えることなく、キレから余韻へと導きます。1年ほどの熟成期間があり、尖りの取れたまとまりのある姿となっています。
「雄町」「愛山」と飲み比べてみるとその違いは鮮明で、私的には「雄町」は東北的、「山田錦」は灘的という印象を持ちました。

有料試飲コーナーでは飲み比べが楽しめます。

蔵がつぶれて、空しか見えない

平成7年(1995年)1月17日、阪神大震災が発生しました。灘五郷も激震に襲われ、灘浜福鶴蔵の酒蔵も全壊しました。完全に倒壊した瓦礫を前に「蔵がつぶれて屋根が落ち、空しか見えない」と言った杜氏のつぶやき。ここから「空蔵」は出発しました。まさにゼロから出発したこのブランドは純米吟醸からはじまり、新シリーズとしてこの3種類の米違いの純米大吟醸が登場しています。

震災から立ち上がった”志しの酒”

震災によって灘の酒蔵は大小を問わずすべて被災し、その年の酒造はほとんどがストップするという状態で、酒蔵の倒壊によって休蔵或いは廃業に至るところも数多くありましたが、そのなかで、小山本家グループという後ろ盾があったにせよ、翌年2月には新蔵を完成させて再スタートを切っています。この再スタートのなかで「空蔵」ブランドは「灘の地酒、灘を代表する酒となるよう、決して大量生産せず、安値さと粗製の酒に惑わされる事なく」と「その時の思いを決して忘れることがないように、自然の恵に感謝するとともに、毎年初心にかえり真心込めて醸すことを誓った”志しの酒”」として販売店を限定した流通となっています。
当時は南部杜氏さんをはじめ花巻から来ていた10人の蔵人さんは幸い無事だっとそうですが、現在も南部流の系譜にあり、平成30酒造年度南部杜氏自醸清酒鑑評会の吟醸酒部門で第12位(松山英樹杜氏)と上位入賞しています。

前面が販売コーナー、後背が醸造蔵となっています。

スポンサーリンク

スポンサーリンク
スポンサーリンク