壺坂酒造「雪彦山 呼應(こおう)一〇〇年」30BY 兵庫県姫路市

姫路市夢前町の壺坂酒造さんが、100年前に山田穂と人気を二分した酒米「辨慶(べんけい)」を復活して醸した純米酒「雪彦山 呼應(こおう)一〇〇年」を発表しました。酵母も蔵付き酵母を採取して使用しています。平成31年3月22日発売。
雪彦山 呼應(こおう)一〇〇年 500ml 2,160円

[Seppiko-san Ko-Oh a hundred years junmai-shu ] Brewery:Tsubosaka syuzo, Hyogo pref, Himeji city, Specific designations:Junmai-shu, Variety of raw rice:Benkei, Degree of rice polishing:70% Pasteurize:pasteurized ,Yeast:original ,Yeast starter:sokujo-moto method, Alc%:16% Fragrance:clear ,Taste:sour and smooth

100年前の酒米「辨慶」を復活

使用米は兵庫県農林水産技術センターに保管されていた700グラムの種籾から復刻した「辨慶」。精米歩合は70%の純米酒です。酒母は速醸酛。酵母は吉備国際大学農学部醸造学科の研究室が蔵内で採取し、選抜・培養した蔵付き酵母を使用。アルコール度は16度の火入れです。なお、「夢前ゆめ街道づくり実行委員会」のプロジェクトとして取り組まれたもので、「夢前町にお越し頂くまちおこし企画の商品の為、予約や発送はお断りしております」となっています。

時を超えたモダンな味わい

百年前の酒造りを復刻したのではなく、百年の時空を超えた繊細でモダンなお酒に仕上がっています。
ほのかな香りは飲み口をすっきり整える果実的なもの。口当たりから舌の上に乗ると、パッと味わいが膨らみます。綺麗な酸味がしっかりと口中を支配し、この酸味を支える甘味が穏やかに広がって、クリアながら、郷愁を感じる独特の旨味に結びます。膨らんだ旨味は苦味と渋味を伴って喉に消え、すばやくキレて後を引きません。
ところで「百年前のお酒」とはどのようなもだったのか?という疑問ですが、「櫻正宗 焼稀 協会1号酵母」が最も”説得力”のある解答だと思います。

江戸時代に創建された醸造蔵

百年の時を超えて人と物が互いに呼び合う

コンセプトは「百年の時を超えて人と物が互いに呼び合う」というもの。100年前なら1919年(大正8年)ですが、1909年には山廃酛、1910年には速醸酛が開発され、1923年には山田錦の開発が始まるという大きな転換期にありました。さらに、1930年代には竪型精米器の実用がはじまっています。

100年前の主要な酒米”辨慶”

このコンセプトに応える一つ目の特徴は、100年前に当地で栽培されていた酒米「辨慶」を使うこと。この米を得たことがこのお酒の出発点になっています。1924年に県奨励品種に選ばれたものの、山田錦の隆盛と入れ替わりに栽培が途絶えていました。兵庫県農林水産技術センター(旧兵庫県立農事試験場)に残された700グラムの種籾から、夢前町のFARM HOUSEが復刻し、150キロを収穫しました。米質については「軟質米というものではないが、溶けやすく、意外に使いやすい米だった」ということで、今後は栽培量も、酒造量も増やしたいというお話でした。

江戸時代創建の酒蔵の蔵付酵母

次に、江戸時代創建の酒蔵から採取した「蔵付酵母」を用いるというもの。吉備国際大学農学部醸造学科の協力で蔵内の12箇所でサンプルを採取。酒造適正に優れた酵母を選抜・培養したものです。実は長らく使われていなかった「水桶」から採取されました。「梁や柱から採取されると思っていたが、酒を入れるわけではない水桶からとは意外だった」というお話で、その性質も「酸がたくさん出るような野性的なものではと予想していたが、意外に穏やかなものだった。感じで言えば7号と9号の間のような」というもの。発酵力も十分で今後の酒造りに活用していくそうです。

蔵内から酒母を採取

百年前の酒造りに向け

さらに、「百年前の杜氏の酒造り」というコンセプト。こちらは、蔵に往時の酒造りの記録が残っていたことから、再現を検討するも、いろいろな条件の違いや実際の酒造りの必要性から、すべて再現というわけにはいかなかったものです。酒母が速醸酛というのも、「150キロの米を精米してわずか105キロ。これを失敗すると取返しがつかない」ということで、経験十分な速醸に落ち着いた結果です。もともと、こちらの蔵では自然条件にまかせた温度管理をしていますので、このあたりは100年前に通じるところですが、今後、辨慶の収穫量の拡大とともに様々な展開を期待せずにおれません。

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