兵庫県宍粟市山崎町の老松酒造さんが今シーズンに発表した初の大吟醸酒「寿恵広老松 純米大吟醸 繋(つながり)」の無濾過生原酒バージョンです。火入れバージョンもあります。H30酒造年度にこの純米大吟醸と貴醸酒がラインナップに加わりました。
寿恵広老松 純米大吟醸 繋(つながり)無濾過生原酒 720mℓ 1,944円
今シーズン登場 山田錦の大吟醸
兵庫県産山田錦を50%精米しています。酒母は速醸で酵母は不明です。アルコール度は17度、日本酒度は±0となっています。酸度は2.2で、アミノ酸度は1.4です。こちらは生バージョンですが、火入れとは異なった味わいで、好みは分かれるというお話でした。無濾過ということですが滓引きは十分なようで、清澄な酒質になっています。
酸味が貫き広がる
「予定より香りが低かった」というお話でしたが、十分に穏やかな果実香が立ち上がります。口当たりからはっきりとした強い酸味が貫き広がります。ほろりとした少しの苦味を伴いますが、喉越しにいたるまで酸味が支配し、比較的長い後味を引きます。甘味とのバランスでは酸味が勝って、純米大吟醸としては濃く、味わいの相がはっきりとしています。
宍粟の食文化に根付いた酒
明和5年(1768年)に当地で創業してから250年になります。数年前に訪れたときは地元販売主体の酒蔵で、「宍粟の人々にとって、この『スエヒロ老松』は晩酌の一杯に欠かせない存在」「宍粟の人々の食文化に根付いてくれている」というものでした。ブランド名も「末広老松」あるいは「スエヒロ老松」で、ラインナップも兵庫産の夢錦と山口県産の日本晴を使った地域で売れ筋の普通酒と純米酒、そして「善次郎」という5年古酒というあっさりしたものでした。以前に見た蔵内は製造設備は連続蒸米機や放冷機をはじめ、比較的大量生産を前提とする規模とレイアウトのようでしたので、地方の酒蔵の多くはそうであったように未納税移出が主体だったのかも知れません。
大きく転換 ラインナップも多彩に
この数年間に「スエヒロ」が「寿恵広」に変わり、米も兵庫夢錦はそのままですが、日本晴が滋賀県産に、さらに山田錦が加わり、それまで無かった吟醸酒が登場。純米吟醸を含めラインナップも十種類余りとなり、今酒造年度から純米大吟醸と貴醸酒が加わっています。地域的には但馬杜氏さんが活躍するエリアですが、こちらは先代の尾崎杜氏から現・川田亨杜氏と丹波杜氏組合の所属。この間に杜氏さんの変更はなく、このたびの変化は蔵元さんの意志によるもののようです。
レストラン開業
このたび久々に訪れたところ、建物内の構成は大きく変貌していました。「播州一献」の山陽盃酒造の道路を挟んだ向かいあるという立地は変わりませんが、旧城下町の風情を色濃く残す旧道沿いの歴史ある建物はレストラン「老松酒蔵館&ダイニング老松」に改装され、今年(2019年)2月にオープンしていました。販売所も併設されています。