灘五郷のうち西郷にある沢の鶴さんが、平成30酒造年度全国新酒鑑評会で金賞を受賞した純米大吟醸酒「平成30酒造年度全国新酒鑑評会 金賞受賞酒 瑞宝蔵」です。「瑞宝蔵」は純米で4年連続の金賞受賞となりました。以前は1升瓶の販売でしたが、今回は200mlと大幅なダウンサイズになっています。300本限定。
平成30酒造年度全国新酒鑑評会 金賞受賞酒 瑞宝蔵 200ml 1,728円
33%精米の純米大吟醸
「純米」に力を注ぐ方針のため、純米大吟醸での出品は必然でしょう。使用米は特A地区にあり、沢の鶴の村米である兵庫県三木市吉川町実楽地区産の山田錦を使用。精米歩合は33%と出品酒としてもかなり削っています。もっとも、沢の鶴ではよく使う精米歩合です。「平成28酒造年度全国新酒鑑評会出品酒の分析」によると、35%未満の出品酒の割合は2.7%で、上位酒でも3.3%と限られています。仕込水は宮水。酒母は速醸酛で酵母は公表されていません。日本酒度は-1、酸度1.3、アミノ酸度は0.9。アルコール度は16度です。
透明感のある酸と早いキレ
純米とは言え、上立香はしっかりと濃厚なリンゴ系の吟醸香です。口当たりの第一印象は「酸」。フルーティという言葉では表現し切れない、鮮やかながら透明感がある酸味です。一方、「米」を感じる滑らかな甘味が味わいの土台を堅実に支えます。この醇良な味わいが、口の中をサラサラと流れて、 一瞬輝く果実味 とお約束の苦味を見せながら、早いキレに結びます。この早さは飲み込むと同時というより、飲み込む前にキレてるんじゃないかと思うほどで、後を引かず真空の余韻のみを残します。全体を貫く落ち着いた様式美に沢の鶴の純米大吟醸らしさを感じます。
販売サイズ1升から200mlに
瑞宝蔵と乾蔵の二つの醸造蔵が鑑評会に出品しています。瑞宝蔵は純米で出品するようになった平成27酒造年度から4年連続金賞を受賞。この10年間を見ると両蔵で、金賞17回、入賞3回という実力です。金賞酒の販売では、昨年まで瑞宝蔵の純米大吟醸はなぜか1升瓶で発売されていました。3万円くらの値段だったと記憶しています。値段もさることながら、鑑評会出品酒を1升手に入れても、とても飲み切れるものではありません。
200mlという極端に小さなサイズは適当で、値段的にもありがたいところですが、一方、このサイズでは温度管理が心配になります。
純米酒を主力に展開
蔵開きでは「純米酒出荷量日本一」という横断幕が掲げられていました。「純米酒」へのこだわり、ラインナップの豊富さが沢の鶴の一つの特徴で、このことは「沢の鶴 米だけの酒」というパック酒の歴史に表れています。発売当時のパック酒は低価格がコンセプトで、これを純米で出すためにはコストを下げる必要がありました。そこで精米歩合を73%としましたが、その結果、精米歩合70%以下という特定名称酒の純米酒基準から外れて、「純米酒」が名乗れなくなり、「米だけの酒」という不思議なネーミングとなっていました。普通酒として世に出た「沢の鶴 米だけの酒」はヒット商品となり、この「米だけの酒」問題は、結局、2004年(平成16年)の基準改正で、純米酒の精米歩合基準が廃止になり、「純米酒」と表示できるようになったというものです。現在の市場で低精米というバリエーションが増えているのは、特定名称「純米酒」が名のれることも一因で、日本酒の味わいの幅を広げた功績があると思います。
米屋が起源「※」を商標
享保2年(1717年)創業。元々は大坂で米屋を営んでいたということですが、屋号はズバリ「米屋」で商標は「※」と老舗感たっぷりです。「『手に入りそうで、意外と手に入らない』のが、沢の鶴のお酒です。これは、私たちが生産量や安売りを求めず、良い材料で昔ながらの伝統的な造り方を守り続けてきたからです」とホームページで紹介されています。一方、「うちは営業力が弱い」というつぶやきもあります。いずれにせよ、業界の主要プレーヤーであることは間違いありませんが、山田錦を使った超高級(額)酒のラインナップ、熟成酒にも特徴があります。