寿酒造「國乃長 とんださけ 純米吟醸」28BY大阪府高槻市

かつての摂泉十二郷のうち上在・富田(とんだ)郷、現在の高槻市富田に蔵を構える寿酒造さんの「國乃長 とんださけ 純米吟醸」28BYです。平成29年9月製造。

國乃長 とんださけ 純米吟醸 720ml 1,200円

[ Tonda-sake Junmai-ginjo] Brewery:Kotobuki Brewery Osaka pref  Takatsuki city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Gohyakumangoku and Akebono, Degree of rice polishing:60%  Pasteurize: pasteurized  ,Yeast:Kyokai No.9 ,Yeast starter:sokujo-moto-method, Alc%:16%  Fragrance:yeast, Taste: rich and acidity

9号酵母の味わい吟醸

原料米は麹米に五百万石、掛にアケボノのいずれも精米歩合60%です。酒母は速醸で酵母は協会9号酵母。Aji-ginjoの英語表記が。アルコール度は16度で日本酒度は+3です。仕込水はこの地に酒造業が興った要因となった阿武山山系の伏流水をくみ上げています。

燗で溶け合う酸と甘味の旨さ

蔵内にある阿武山山系伏流水の井戸

平成28酒造年度全国新酒鑑評会では「あやめざけ大吟醸」を出品して金賞受賞。鑑評会金賞、入賞の常連蔵ですが、この「とんださけ」は趣が異なります。結構強めの麹の香りとアルコール感。重みある酸と野趣ある甘味がそれぞれはっきりと主張します。これを燗(45~50℃)にすると、酸と甘味が溶け合いながらたっぷりした旨味に広がり、よく締まったキレが濃厚で深い後味を引きます。昨今のフルーティの方向に振った吟醸ではないクラシックタイプです。蔵の方針は「端麗辛口の酒は造りません」であり、「味わいの深さがあってこそ酒」となっています。もちろん17世紀のお酒の復刻ではなく現代のお酒ではあります。お酒に付けられたタグの表示は、「冷やして◎、常温◎、ぬる燗〇、熱燗△」ですが、私的には「冷やして△、常温〇、ぬる燗◎、熱燗〇」と受け取りました。

17世紀に興隆した摂津富田郷の酒造り

蔵の外壁に掲げられた摂津富田酒の説明表

摂津富田郷の酒造りは15世紀後半には文献に登場します。時代は応仁の乱で京市中の酒造が壊滅し、周辺地域に移る時期になります。僧坊酒による技術的飛躍から、南都諸白が隆盛となる16世紀を経て、17世紀には酒造中心地としての地位を確立して最盛期を迎えます。18世紀にかけて江戸への下り酒で大規模化し、「江戸積摂泉十二郷」すなわち大坂三郷、伝法、北在、池田、伊丹、尼崎、西宮、堺、今津、上灘、下灘のうち北在の中心として繁栄しました。18世紀後半に中心地が灘郷(西宮、今津、上灘、下灘)に移り、衰退します。
寿酒造は江戸時代末期の文政5年(1822年)に摂津富田郷の酒造りの伝統復活を念願して創業。現在に至ります。旧西国街道沿いの古い町並みを残しますが、大阪中心部と至近距離にあるところから、市街化が進んでいます。酒造りも平成7年(1995年)には地ビールの醸造開始、平成17年(2005年)には大吟醸の酒粕を原料に焼酎の製造開始。濾過せずに酵母の生きた地ビールは人気を博して、夏の蔵開きはビール、冬の蔵開きは日本酒という切り分けになっています。なお、富田杜氏さんはじめ、日本酒もビールも同じメンバーで造られているようです。

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