岡田本家「神吉(かんき) 純米吟醸」29BY 兵庫県加古川市

「加古川夢錦新地酒プロジェクト」から誕生した「神吉(かんき) 純米吟醸」。「農事組合法人みやまえ営農」が無化学肥料、減農薬で兵庫夢錦を栽培し、岡田本家さんが醸造を担当した純米吟醸生原酒です。平成30年3月製造。
神吉(かんき) 純米吟醸 720ml 1,640円

[Kanki junmai-ginjo] Brewery:Okada-honke Brewery, Hyogo pref ,Kakogawa city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Hyogo-yumenishiki, Degree of rice polishing:60%, Pasteurize:no pasteurized ,Yeast:descended from Kyokai No.9 ,Yeast starter:sokujo-moto-method, Alc%:17% Fragrance:peach, Taste: fruity and sour

地元産米を地元の酒蔵で個性ある酒に

平成29酒造年度最後の醪

原料米は地元、加古川市西神吉町宮前産の兵庫夢錦。「神吉(かんき)」の名前はここから付けられたものです。精米歩合は60%。酒母は速醸で、酵母は協会9号系酵母で酸が多く出るタイプというお話でした。上槽はヤブタでアルコール度は17度。酸度、アミノ酸度は表示されていません。こちらの蔵の最近のプロダクトは多くが生酒となっているようで、これも生生の原酒です。鶴首の青い瓶は播州の青空、中心の3本ラインは加古川のイメージだそうです。

軽快、フレッシュな酸が爽やかな味わい

控えめながらもしっかりとした白桃のようなイソアミル系の香り。微細な発泡感を伴う第一感は、やわらかな甘みを感じます。この透明感のある甘味がしばらくとどまって、次にフレッシュな酸味が広がって軽快さを作ります。これが味わいの骨格でしょうか。後半には渋味と苦味が表れてキレ味を作りだしますが、後味を引くことなく爽やかな余韻を残します。初夏の木漏れ陽に似合いそうな風情です。

生産広がる兵庫夢錦

兵庫夢錦は兵庫県農業総合センター農事試験場酒米試験地で「菊栄・山田錦F2」と「兵系23号」の交配で開発された酒米(1995年品種登録)で、かつては夢前(ゆめさき)川の西側でのみ栽培されていましたが、現在は播州全域に広がっているようです。県内の酒米としても山田錦、五百万石に継ぐ使用量になっています(平成28年栽培面積、山田錦5,560ha、五百万石238ha、兵庫夢錦125ha、兵庫北錦63ha)。以前は播州では兵庫夢錦、灘や丹波では兵庫北錦や五百万石という印象でしたが、最近は灘の酒蔵でもよく使われています。

加古川夢錦新地酒プロジェクト

以前に使われていた木造の醸造蔵 現在はヨガなどのイベントスペース

このプロジェクトは2016年に兵庫県や加古川市、JA兵庫南によって地域振興を目的に始まったもの。「ヘアリーベッチ」というマメ科の植物の緑肥を田んぼにすきこんで、無化学肥料、減農薬で栽培するこいうもので、瓶にも表示されている「はりま空の舞」とは空気中の窒素とCo2を吸収して土壌に還す天然肥料「ヘアリーベッチ」を使うことで、化学肥料や農薬の使用を減らした農作物等の統一愛称となっています。
岡田本家は加古川市唯一の酒蔵として、このプロジェクトに参加。地元産の米、地元の水、地元の杜氏・蔵人による酒造りという近年のトレンドと、天然肥料、無あるいは減農薬の農作物というトレンドを融合した製品になっています。

若い蔵元杜氏が新しい感性の酒造りと酒蔵運営に取り組む

ヤエガキ製の麹室は休造した酒蔵からダウンサイズして移したもの

岡田本家は、かつては灘の大手メーカーへの樽売り(非課税移出)で、酒造シーズンに1日10,000リットルを製造し、丹波杜氏や南部杜氏が酒造りを担っていましたが、樽売りの終了とともに、生産量は大幅に減少。現在は年間25,000リットル(140石ほど)を蔵元杜氏の岡田洋一氏ら2人が若い感性で醸造しています。自社ブランドは「金鵄盛典(きんしせいてん)」ですが、通常は「盛典」で通じます。この生産量ですから、仕込みも小仕込みで、吸水、蒸米、製麹、酒母、醪、上槽まで目の行き届いた手作業となっています。ホームページではスタンダードの製品のみが紹介されていますが、毎年、新しい製品が発表されており、最近は地元を超えて、取り扱いも広がっているようです。

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