菊正宗酒造「菊正宗 兵庫恋錦 特別純米酒 原酒」R1or2BY 兵庫県神戸市

灘・御影郷の菊正宗酒造さんだけが使う酒米、兵庫恋錦を使った「菊正宗 兵庫恋錦 特別純米酒 原酒」が500本限定で蔵出しされました。菊正宗のみで味わえる「幻の酒米」ということですが、年に2回ないし3回蔵出しされると思います。うち1回は「灘の生一本」のときになります。酒造年度の表記はありませんが、この米の生酛で2021年1月蔵出しというタイミングでなので、私はR1BYだと思います。2021年1月製造。
菊正宗 兵庫恋錦 特別純米酒 原酒 720ml 1,650円

[Kikumasamune Hyogo-Koinishiki Tokubetsu-junmai-syu gensyu] Brewery:Kikumasamune Brewery, Hyogo pref, Kobe city, Specific designations:Tokubetu-Junmai-shu, Variety of raw rice:Hyogo-koinishiki ,Degree of rice polishing:?% , Pasteurize:pasteurized ,Yeast:unknown, Yeast starter:Kimoto method, Alc%:18%, Fragrance:banana,  Taste:rich

兵庫恋錦の生酛、特別純米酒

原料米が兵庫恋錦であることが特徴の特別純米酒です。精米歩合はどこを見ても表示されていません。特定名称酒の品質表示基準では「純米酒又は本醸造酒のうち、香味及び色沢が特に良好であり、かつ、その旨を使用原材料、製造方法その他の客観的事項をもって当該清酒の容器又は包装に説明表示するもの(精米歩合をもって説明表示する場合は、精米歩合が60%以下の場合に限る。)に「特別純米酒」又は「特別本醸造酒」の名称を用いること」(「清酒の製法品質表示基準を定める件」平成元年11月22日国税庁告示第8号)となっていますので、「使用原料」の表示で条件をクリアしているのでしょう。同じく兵庫恋錦を使った「灘の生一本」は精米70%なので、この前後の見当かとは思います。酒母は生酛で、酵母は不明です。アルコール度は18度で、日本酒度+6となっています。

印象的な酸味とコクは兵庫恋錦の特徴か

特別純米酒ですが、開栓すると甘い果実香が穏やかながら豊かに立ち上がります。まず冷で。口当たりから一呼吸置いて洗練された甘味と旨味が広がり、さらに半呼吸置いて酸味が広がります。このはっきりした酸味が主旋律です。次に蔵のおススメに従って上燗で。口当たりからきめ細かい甘味と旨味が滑らかにボリューム感をもって膨らみ、酸味がたおやかに広がります。なんとも鮮やかで印象的な酸味は兵庫恋錦の特徴でしょうか、菊正宗の生酛らしさでしょうか。いずれにしても、計算された美しいプロポーションとしっかりしたコクを見せながら、少し早めにキレ上がり、余計な味が後を引くことがありません。薄っぺらな辛口ではない、味わい深い逸品です。

兵庫恋錦という酒米

兵庫恋錦の開発名は「兵系酒18号」で、山田錦とIM106を交配したもの。1960年代に開発が始まり1972年に品種登録されています。IM106は農林8号を放射線処理してできた、千粒重30グラム以上という大粒種です。粒の大きさは一見して明らかですが、写真のように短悍で悍が太いため耐倒伏性は高くなっています。しかし、栽培地が増えないのは、いもち病耐性が低いという難点があることと、大きい心白の発現率は高いものの、タンパク質含有量が高く、超軟質米で米の溶けも計算しにくく、吸水・蒸米から酒母、醪の管理に至る全醸造工程にわたって技術的難易度が高いためということのようです。このように扱いが難しい米であることは確かなようで、現在は菊正宗酒造さんの契約田でかろうじて継承しています。

三木市吉川の「山田錦の館」にディスプレイされた酒米。右から4番目の兵系酒18号が兵庫恋錦

令和元年産等級検査 特上22.0% 特等69.0%

令和元年の収穫量は71トンで、全量兵庫県三木市吉川特A地区の菊正宗契約田での栽培です。農産物等級検査の速報値(R2/3/31)では、特上22.0%、特等69.0%、1等6.8%、2等2.2%、3等0.0%という驚くべきもので、どれほどの努力と技術が注ぎこまれたかがわかります。同じ速報値の中で「特上」を獲得したのは、兵庫県産愛山9.9%、広島県産雄町1.6%、山形県産出羽の里0.7%、三重県産山田錦6.1%、兵庫県産山田錦4.4%、山口県産山田錦1.1%、徳島県産山田錦7.3%、福岡県産山田錦0.3%のみというもので、生産量がごく少ないとは言え、この意味がよくわかります。

山田錦の館で、縁起物?として販売されている兵庫恋錦の稲穂。米そのものは販売されていません。

超軟質 難易度が高いキクマサの誇り

「酒造好適米とはいえ、お米自体が柔らかくてデリケートなため、仕込みの難易度は高く、高度な技術を要します。米一粒一粒を大切に精米し、手間ひまをかけて、菊正宗ならではの「幻の酒」を完成させました」というもので、「抜群の切れ味と深い味わいで飲み飽きしない純米酒は、杜氏や蔵人の情熱が詰まった紛れもない菊正宗の自信作です」というお酒は、まさに「菊正宗」でしか味わえないものです。

三木市吉川の酒造米記念碑では毎年、田植えの前に祈願祭が行われています。

 

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