新米新酒が続々と蔵出しされています。こちらは、灘・御影郷の泉酒造さんが12月12日に発売した「仙介 特別純米 しぼりたて 無濾過生酒原酒」です。泉酒造さんは琥泉と仙介ブランドを展開されていますが、山田錦を使うのが「仙介」のようです。2020年12月製造
仙介 特別純米 しぼりたて 無濾過生酒原酒 720ml 1,650円
新米の山田錦+五百万石を無濾過生原酒で
使用米は麹米(20%)に山田錦、掛米(80%)に五百万石とともに兵庫県産酒米を使用するという、この時期の新米新酒としては贅沢な組み合わせです。精米歩合は65%。酒母は速醸酛で、酵母はいつもどおり非公開となっています。アルコール度は16度で、酸度及びアミノ酸度は不明です(後日、日本酒度+2,酸度1.8、アミノ酸度1.0と判明しました)。無濾過の生原酒となっています。今年の兵庫県産の山田錦の収穫は台風の襲来を挟んで、10月の初旬と最下旬に分かれたようです。
整った姿の美しい、フルーティな新米新酒
まずは、今年の新米新酒の登場がを祝って味わってみます。吟醸ではありませんが、開栓から鮮やかな果実香がただよいます。このあたりは近年のトレンドでしょうか。口当たりは微細な発泡感とともにフレッシュな甘味が第一印象です。透明感のあるフルーティな甘味が膨らみ、これに鮮明な酸味が太すぎることなく突き抜けていきます。前半から中盤に味わいの中心があり、後半は比較的早いキレを見せながら、綺麗な余韻を短く漂わせます。一貫して輪郭のはっきりした、整った姿が美しいお酒。この季節の新米新酒は、まず出すことが第一となりがちですが、雑なところの無い完成度の高さは、こちらの酒蔵らしいところでしょう。無濾過ですが、おりが目につくことはありません。
今年の米はいかに・・
新酒の季節にとりわけ注目されるのは、こちら蔵のお酒の特徴がフレッシュ・フルーティなイメージにあふれているからでしょうか。このお酒の直前には、今シーズンの最初の新米新酒として、兵庫県産米を使った「琥泉 純米吟醸 しぼりたて 無濾過生酒原酒」「琥泉 純米吟醸 おりがらみ 無濾過生酒原酒」がともに精米60%で発売されています。フェイスブックによると、使われた早生の品種は「硬い」と読んで低温醪でじっくり溶かしたそうですが、それでも醪日数は伸びたそうです。
今年の夏はとてつもなく暑かったですが、やはり影響があったのでしょう。アミロペクチン側鎖長に着目した「令和2年産清酒原料米の酒造適性予測」(酒類総合研究所)によると7月中下旬出穂の五百万石などは「やや溶けやすい」、8月下旬から9月上旬出穂の山田錦(西日本)などは昨年同様「溶けにくい」という予測でした。出穂期の夏が高温だと「老化しやすく、醪中で酵素消化されにくい」、低温だと逆に「老化しにくく、醪中で酵素消化されやすい」とされています。
チャレンジフルな注目の酒蔵
もちろん、こちらの酒蔵は新米新酒だけではなく、大吟醸クラスのお酒も平成29酒造年度全国新酒鑑評会では金賞受賞など注目と評価があつまります。一方で、この時期に「山廃純米 無濾過生原酒」が発売になっています。近年は山廃にも力が注がれているようです。今夏には、「泉チャレンジ」として新開発米Hyogo Sake85を使ったかなり個性的なお酒「泉チャレンジ 元BY 山廃純米無濾過生原酒 Hyogo Sake 85」が登場しました。
震災で倒壊 新蔵を建設中
1995年の阪神淡路大震災では醸造蔵が倒壊。当初は縁戚である香川県の西野金陵さんの設備を借りての醸造という経験もなさっています。後に現在地に鉄骨の醸造蔵を設置して、若手の丹波杜氏である和氣卓司杜氏を中心に、この設備で鑑評会金賞という実力。県下の酒蔵のなかでも人気が急上昇しています。現在、倒壊して更地になった敷地に2階建ての新蔵兼事務所を建設中です。