2016/2/17投稿記事 灘・西宮郷にある大手、辰馬本家酒造㈱さんの「黒松白鹿 山田錦 大吟醸 袋搾り」です。平成28年2月製造。
特徴 限定50本販売の大吟醸袋搾り
このお酒は、2016年2月13日開催の「白鹿 蔵開きマルシェ」にあたって、山田錦誕生80周年を記念して造られたもので、会場で限定50本販売されました。米は兵庫県産特上級山田錦を100%使用。精米は40%です。麹は手作りで酒母は速醸。酵母は独自酵母ですが、高エステル生成系の酵母だと思います。仕込水はもちろん宮水。上槽は名前どおりに袋搾りです。
印象 完成度高いバランス
お味は山田錦の大吟醸そのもの。開栓の途端、猪口に注いだ瞬間にカプロン酸エチルの上立香が鮮やかで濃厚に立ち昇ります。杜氏である丹波杜氏・壱岐正志氏によれば、この蔵の酒造りの特徴は「欠点の無い酒」ですが、そのとおりに、五味が見事にバランスしています。広がりもキレもすばらしい、完成度の極めて高いお酒です。720mlを50本とは随分少ない仕込みですが、レギュラーのラインナップにこのスペック(山田錦40%精米の大吟醸)のお酒はありません。従って、本当にこのために造られたお酒でしょう。まず、今シーズンのベストに入る旨さです。
灘屈指の名門蔵
ラインナップのトップは大吟醸であることが多いですが、こちらは純米大吟醸がトップ。カタログでは「V-1000(650ml)」10万円を最高に「V-500(650ml)」5万円、「鳳凰白鹿(1.8ℓ)」3万円、「瑞祥白鹿(1.8ℓ)」2万円と続きますが、大吟醸は高い方が1.8ℓで4千円と大きく差が開きます。辰馬本家酒造は寛文2年(1662年)に西宮の地で創業。江戸時代に下り酒の製造と廻船事業で発展した代表的な灘の酒蔵です。蔵元の居宅から宮水が出たという立地で、明治22年(1889年)には3,150klを造って酒造量日本一に。日本酒造組合中央会会長も2度務めるという名門蔵です。
阪神大空襲、阪神淡路大震災で大きな被害を受けますがその度に復活。六光蔵、乾蔵、戎蔵の3蔵を持ちますが、現在は「これができていなければ震災で廃業したかも」という平成5年(1993年)竣工の六光蔵のみが醸造しています。全量速醸だそうです。酒造時期は9月から6月。年間酒造量は12千klほどでしょうか。写真の「六光蔵」ですが、隣り合う精米所で自家精米されたものが、連続蒸米、放冷機、機械製麹から酒母タンクと自動化され、原料はエアーで送られます。円筒形の醪タンクは12万リットルという巨大なものが18基。もちろん手作業などできません。ヤブタも大型のものが10基据えられています。一方、手作業の限定吸水、製麹、小仕込みの酒母、醪造りから袋搾りという作業も同じ蔵で行われています。
黒松白鹿 山田錦 大吟醸袋搾り 720ml 5,000円
西宮市建石町2-10