2016/7/22投稿記事 兵庫県西宮市、灘五郷のうち西宮郷に蔵を構える白鷹さんの「大吟醸 金賞白鷹 」です。平成27酒造年度全国新酒鑑評会の金賞受賞酒。H28年7月製造です。
特徴 全国新酒鑑評会の金賞受賞酒
今期5本目になる金賞受賞酒です。お米は兵庫県吉川特A地区産の山田錦。精米は35%です。アルコール度は16度以上17度未満、日本酒度は+4。その他のスペックは公表されていませんが、酒母は速醸、酵母は1801号です。7月から限定100本販売されています。
印象 甘みの官能が勝る個性
「しなやかで、ふくよかで、 きめの細かい味」「リンゴのような香り」という紹介になっています。そのとおりカプロン酸エチルのりんごの香りがふくよかに香ります。鋭い感じではありません。口当たりも穏やかに甘みと苦味が合わさって”きめ細かい”味わいです。他の金賞受賞酒と比較すると、最初の口当たりのインパクトが軽く感じます。甘みの官能が勝る印象で、最後のキレの寸前まで甘みが残ります。終始、ホロホロする苦味感は弱いです。
断面としては金賞受賞酒の香りと味ですが、比較的、甘みと酸を感じながら後味が長く引っ張られます。スパっと切れるわけではなく、同じ西宮郷でも”白鹿”とは明らかに異なった味わいです。このあたりが個性でしょうか。
灘の伝統を守る生酛蔵
こちらの蔵は灘にありますが、いわゆる大手メーカーではありません。実際、製造部門は9人で、うち、諏訪杜氏である東条杜氏さんを含め7人が社員で、2人が季節雇用の蔵人さんという少人数の体制です。製造量の約95%が生酛づくりという灘の伝統を守る酒づくりで、いかにも「灘酒らしい酒」という印象があります。そいう意味では「うちがめざす酒質と鑑評会の出品酒の酒質は異なる」という話です。一応、出品の意図は技術力の向上ですが、一方で、金賞をとったうえで「白鷹のめざす酒は違うと言いたい」という気持ちがあり、取れないことで「負け惜しみとは思われたくない」という意地で、金賞の常連に名を連ねる努力を重ねられているようです。たしかにレギュラーのラインナップのお酒は「宮水の郷」をはじめ、濃醇で力強いもの。旨みも酸味も十分で、今回のお酒とは確かに方向性は異なります。
「村米制度」を創設して、酒米育成に努めた伝統
白鹿の辰馬本家に対して、こちらは北辰馬家と呼ばれます。伊勢神宮で毎日神様に供えられる酒は白鷹です。山田錦は兵庫県三木市吉川町市野瀬・楠原地区の契約農家で栽培されたもの。最も早く「村米制度」をはじめて、優良な酒米の、”確保”などではなく”育成”に努めた伝統があり、契約田も100年以上の歴史があります。現在も、この地区の農家の方とお話をすると、「白鷹の山田錦を作っている」という誇りと強い絆を感じます。また、酒樽を洗うのに水ではなく酒で洗っていたという、「精良醇美」の酒を造るために金を惜しまない伝統は今に受け継がれています。
現在は本社の蔵一つが稼働しています。灘には現役の古い木造蔵はありません。これは、1945年の阪神大空襲で大半が焼失。辛うじて残った蔵も1995年の阪神大震災で倒壊したためで、見事な北流れの大きな木造蔵が見れないのは残念なことです。
大吟醸 金賞白鷹 720ml 6,480円
兵庫県西宮市浜町1番1号