鯉川酒造「純米大吟醸 別嬪 BEPPIN 金賞受賞」29BY 山形県庄内町

山形県の庄内平野、庄内町余目にある鯉川酒造さんが平成29酒造年度全国新酒鑑評会において、純米酒で金賞を受賞した「純米大吟醸 別嬪BEPPIN 金賞受賞」です。平成30(2018)年5月製造。遠方のため蔵に訪問できなかったため、浜松市の酒販店経由で入手しました。
純米大吟醸 別嬪 BEPPIN 金賞受賞 720ml 3,240円
[Beppin Junmai-daiginjo Gord prize of Japan Sake Award 2018] Brewery:Koikawa Brewery ,Yamagata pref, Syonai city, Specific designations:Junmai-daiginjo-shu, Variety of raw rice:Yukimegamii, Degree of rice polishing:40% Pasteurize:pasteurized ,Yeast:Yamagata kobo ,Yeast starter:sokujo-moto method, Alc%:16.3% Fragrance:apple pear, Taste:fruty and smooth

雪女神 山形酵母 純米大吟醸

原料米に山形県の開発米である「雪女神」を使用した純米大吟醸酒。精米歩合は40%です。酒母は速醸で酵母は山形県開発酵母、山形(吟醸)酵母のようです。アルコール度は16.3度。日本酒度+1、総酸度1.4、アミノ酸度0.9となっています。「金賞受賞酒」ではなく、「金賞受賞タンクよりビン詰め酒」と表示されていますが、これは上槽が袋吊りではなく、ヤブタか槽搾りという相違があるという意味かと思います。アルコール度は低めですが、もちろん加水ということはないと思います。

飾りない濃密な美しさが格別の味わい

出品酒としては穏やかな香りなのは純米らしさでしょうか。少し若いリンゴの香りが漂うように香り、一方、味わいが隅々までしっかりと詰まっています。その味わいは果実的で瑞々しく柔らかい酸味と、くどさのない端正な甘味が溶け合って流れるもの。雑味のない美しさは金賞酒としては当然ながら、ジューシーとさえ言える濃密な旨みも合わせ持っています。一方で、キメ細かく滑らかな口当たりから続く濃密さがその頂点でフッと消え去り、ほろりとしたキレと余韻を残すところが格別。派手に立ち回るお酒ではなく、素直で飾りのない美しさと深い味わい、後姿に艶やかな余韻を残す見事なお酒です。

ポスト山田錦を期待される地元産米

「雪女神」は山形県の大吟醸向け新規開発米ですが、その特徴は
・出穂期,成熟期は「出羽燦々」と同程度で,稈長は「出羽燦々」よりも短い。
・収量性は高く,玄米千粒重も大きく,また,耐倒伏性も優れている。
・心白の発現も良く,低タンパク性も併せもつ
・大吟醸酒用の高精白に適している。
というものです。

「山形酒104号」から「雪女神」へ

庄内平野から鳥海山を臨む

平成29酒造年度から「雪女神」のネーミング本格投入されたお米ということで、それまでは「山形酒104号」という名で2015年から試験醸造されており、鑑評会での優秀な成績(H27、H28酒造年度金賞純米大吟醸)を収めています。系統的には「庄内2560号・出羽の里と蔵の華」を両親にするもので、それぞれの系統を遡ると、東北140号、山田錦などに行きつきます。
鯉川酒造さんも従来の出品酒には山田錦を使われていたようですが、地元産の米での挑戦というところに意味があります。山田錦産地の北限は新潟県上越市あたりで、山形県という寒冷地で「山田錦などに負けない酒を地元の米で製造していくために」という期待を担った山形米の集大成が「雪女神」ということになるようです。
さらに、山形酵母を使うということで、「日本酒市場でテロワール」という課題に対して、地元の米、地元の蔵人が地元の酵母も使って、現地の自然環境のなかで製造するという目標が高い次元で達成されたものと言えそうです。

純米での受賞

鯉川酒造ではこれまでも純米での金賞受賞歴がありましたが、鑑評会の純米での金賞は平成27酒造年度では金賞227点中15点(出品139点)、平成26酒造年度では222点中13点(出品121点)、平成25酒造年度で233点中8点(出品106点)と増加しつつも狭き門であることに変わりはありません。

「亀の尾」復活の先駆者 鯉川酒造

ところで、鯉川酒造と言えば「亀の尾」で知られ、純米吟醸酒「亀治好日」は代表作です。今や人気の酒米ですが、このお米は吸水が難しいため酒造りの技術が必要な上、栽培が困難で収量も少ないため栽培が途絶えていました。元々庄内で開発された亀の尾を復活させて、酒として世に出したのは、鯉川酒造さんの卓見と努力の賜物です。最初に飲んだのも庄内地方出身の方からのいただきものとしてでした。米どころであり、かつ酒どころとしていくつもの銘醸蔵を抱えるこの地方への酒蔵めぐりの機会には是非、寄ってみたい酒蔵です。(写真は庄内出身の知人に撮影を依頼したものです)

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