「純青サポーター」年3回頒布の最終回となる8月の2本、「純青 兵庫夢錦 生酛純米吟醸 火入れ」「純青 絹光 生酛純米 火入れ」です。今回のテーマは「味わいの違い」です。平成29年8月製造。
純青サポーター 年会費10,000円(税別) 3回6本(各720ml)
同じ生酛で異なった2本~スペックだけではわからないが~
「純青 兵庫夢錦 生酛純米吟醸 火入れ」は麹米掛米とも兵庫夢錦の60%精米でアルコール度は16度。冷やから常温、上燗(45℃)が推奨です。一方の「純青 絹光 生酛純米 火入れ」は麹米が山田錦、掛米がキヌヒカリで精米歩合は60%。アルコール度は16度。飯米のキヌヒカリを使い、ぬる燗(40~45℃)からとびきり燗(55℃)を推奨というもの。いずれの米も地元加西市産となっています。酵母は協会901号を基本にしたバリエーション。
はっきりした味わいの違いが特徴
いずれのお酒もスリムな印象。「夏酒バージョン」ということでしょうか。くせのない姿が特徴です。
「純青 兵庫夢錦 生酛純米吟醸 火入れ」は口当たりから”パンっ”とした酸の広がりが花火のよう。酸の球面をスルリと滑ってすばやくキレていきます。穏やかな香りも含めてフルーティで軽快なお酒です。蔵の紹介は「シャープできれいな酒質」「切れ味の鋭さ」です。
一方の「純青 兵庫夢錦 生酛純米吟醸 火入れ」はストレートです。燗つけで広がる稲藁の香り。上燗で一気に押し膨らむ旨味と酸味。酸を残しながらまとまりのあるキレ。蔵の紹介は「炊きたてごはんのようなふっくらとした味わい」「どっしりした旨み」です。
「生酛」の多様さを考える機会になった
平成28酒造年度のテーマは古式醸造法に試行錯誤した「富久錦流の生酛づくり」。このなかで一般的な「生酛づくり」とは少し違うイメージとして、自然の乳酸菌から生まれるおだやかな「酸」を主役にしたいというものでした。今回も含めて酸が美しく立ち上がった印象があります。一方、今回は特に「生酛」のもつ一面、つまり雑味のない清廉を感じました。つまり、教科書的な生酛では野生酵母や雑菌が硝酸還元菌と乳酸の時間をかけた働きで完全に淘汰され、乳酸球菌。続いて乳酸桿菌の単相になり、そこに酵母を入れることで理想的な酒母ができて、雑味やブレのない酒質が完成するのではないかということです。「生酛」にも幅があるように思います。さすがに生酛の本流である丹波杜氏さんはきれいな生酛を造る印象がありますが、こちらも丹波杜氏・村崎哲也氏です。
来酒造年度も楽しみ
5年目になる平成29酒造年度の募集がまもなくはじまりますが、どのような姿を見せてくれるのでしょうか。