佐浦「純米吟醸 浦霞禅」30BY 宮城県塩釜市

宮城県の港町、塩釜市にある佐浦さんの「純米吟醸 浦霞禅」です。規模においても酒造史的にも宮城県のみならず東北を代表する酒蔵ですが、「純米吟醸 浦霞禅」はこの蔵を代表するお酒と言えるでしょう。
純米吟醸 浦霞禅 720ml 2,160円(税抜き)

[ Uragasumi-Zen] Brewery:Saura Brewery, Miyagi pref, Shiogama city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki and Toyonishiki, Degree of rice polishing:50% Pasteurize: pasteurized ,Yeast:undisclosed ,Yeast starter:sokujo-moto-method, Alc%:15-16% Fragrance:banana, Taste: rich

浦霞を代表する純米吟醸

原料米は山田錦とトヨニシキで精米歩合は50%の純米吟醸酒です。この組み合わせでは麹米或いは酒母米が山田錦、掛米がトヨニシキという組み合わせでしょうか。酒母は速醸酛で酵母は不明です。協会12号酵母発祥の酒蔵ですが、それではありません。酵母は秘密というよりは積極的には開示していないスタンスのようです。アルコール度は15~16度、日本酒度は+1~+2、酸度は1.3~1.4となっています。蔵出しは急がず、じっくり味ののるタイミングをはかる方針のように見受けました。

ゆっくりと立ち上がる品格のある味わい

南国の果実的な甘やかな香りが穏やかに昇ります。口当たりはきめ細かくとろりと押してくる質感とゆっくりした立ち上がりが特徴。丸みのある酸味が広がり、米の甘味を包むことでたっぷりした旨味を膨らませます。「品格のある味わいをめざして Classic & Elegant」となっていますが、穏やかな全体像のなか、後半に味わいどころがやってきて、鮮やかなキレに結びながら”禅”の名に相応しい余韻を残します。さすがに東北地方、或いは南部杜氏を代表する酒蔵の看板となるお酒。計算の行き届いた端正な姿を記憶に残します。

蔵の前に掲げられた解説の案内。

発売当時から「丁寧に造って丁寧に売る」

「浦霞禅」が売り出されたのは昭和48年(1973年)。南部杜氏。平野佐五郎を継いだ平野重一時代。吟醸タイプの酒を得意にしていながら、時代的には量が求められていた時代で、吟醸酒は鑑評会用というものだったそうです。そのなかで「吟醸酒を一般向けにリーズナブルな価格で出したい」という思いで、スタートは広島産八反錦をアル添の吟醸酒で。当初は売れ行きもいまひとつであったところ、「丁寧に造って丁寧に売る」という方針を崩さず、昭和50年代には純米吟醸に。後の地酒ブームを迎えて、好調な売れ行きに転じ、現在は看板酒になっています。この成功の理由はホームページで「原価が少々高くついてもより良い酒質を目標にしたのは勿論のこと、流通段階における品質保持にも出来得る範囲内で配慮し、販売量はそこそこでも余り気にせず、じっくり気長にやっていったこと」と、このお酒の佇まいがよくわかる解説となっています。

塩釜市本町の本社蔵。ほかに東松島市に矢本蔵を持つ。

トヨニシキ

トヨニシキという米は関西では縁の薄いお米ですが、東北78号(後のササニシキ)と奥羽239号を交配、その後代から育成され、1969年に「水稲農林199号」として登録されたものです。当時、北は秋田・岩手両県から南は沖縄県まで栽培され、1976年には213,234ha(全国水稲うるち作付面積の8.5%)作付けされ、「日本晴」に次ぐ第2位の普及面積が記録されています。しかし元々「食味が劣る」という評価で、後の食味重視の時代には「あきたこまち」や「ひとめぼれ」を代表とする良食味の銘柄米に圧され、2003年には全国作付面積は445haに減少し、主に酒造用として利用されるものになっています。現在は佐浦さんをはじめ宮城県内のお酒に名前を見受けます。

兵庫県特A地区山田錦

佐浦さんはトヨニシキで全国新酒鑑評会金賞を受賞するなどした結果、宮城県の他の蔵元も含め山田錦を必要とせず、購入の努力もしなくなったため、宮城県ではしばらく買うことが出来なくなったそうです。そうした昭和50年頃、当時の社長佐浦茂雄氏が山田錦栽培地の兵庫まで出向き、宮城県でも山田錦が手に入るように農協に依頼し、山田錦が手に入るようになった経過があります。現在は、毎年9月に開催される兵庫県加東市の「山田錦乾杯まつり」で東北地方で唯一、ブースを開いています。

山田錦特A地区の旧東条町がある兵庫県加東市で開催される「山田錦乾杯まつり」では東北地方唯一のブースを開いています。

スポンサーリンク

スポンサーリンク
スポンサーリンク