真名鶴酒造「純米大吟醸 酒蔵魂 さかほまれ」R1BY 福井県大野市

福井県奥越地方の名水の地、大野市に蔵を構える真名鶴酒造さんの「純米大吟醸 酒蔵魂 さかほまれ」です。このお酒は福井県が開発した新鋭の酒米「さかほまれ」を使用し、さらに県開発酵母を使用したという意欲作で、今後、レギュラーとして落ち着くか、別の方向に向かうかは、飲み手と造り手さんの、今年度の評価にかかるでしょう。2020年10月製造。
純米大吟醸 酒蔵魂 さかほまれ 720ml 2,090円

[Manaduru Junmai-daiginjo Sakagura-damasii Sakahomare] Brewery:Manaduru brewary , Fukui pref, Ohno city, Specific designations:Junmai-daiginjo-shu, Variety of raw rice:Sakahomare, Degree of rice polishing:50%, Pasteurize:pasteurized ,Yeast:FK-802 ,Yeast starter:sokujo-moto method, Alc%:16% Fragrance:apple, Taste:fruity

福井県開発の米「さかほまれ」と酵母「FK-802」

令和元酒造年度に投入された福井県開発米「さかほまれ」を使った純米大吟醸酒で、精米歩合は50%。酵母は福井県開発酵母のうち、吟醸向けの最新酵母FK-802。酒母は速醸酛だと思います。アルコール度は16度、酸度1.9で日本酒度は-3となっています。仕込水に越前大野の名水「御清水」を使っているのも一つの特徴かと思います。2020年限定となっています。

鮮やかにフルーティで精緻なお酒

立ち昇る鮮やかな吟醸香。若いリンゴを思わせる爽やかな香りです。口に含んだ第一感は甘味。洗練された甘味が終始ソリッドに中心を貫きます。これに寄り添うように果実的な酸味がバランスよく包み込んで、滴るようなフルーティな味わいが広がります。蔵の紹介は「まろやかな旨味に、瑞々しくフルーティーな酸と華やかな香りが同居する爽やかな香味」です。純米大吟醸ですが、全体のイメージは、全国新酒鑑評会に出品されるような精緻で華麗なお酒。実際の出品酒と比較すると、精米歩合のためか、味わいの奥行きや幅が若干深めにとられているようで、その分飲みやすい味わいのお酒になっています。キレはこれも若干強めの苦味で綺麗にキレて、清らかな余韻を残します。

福井県オリジナルの米と酵母

吟醸酒用酒米「さかほまれ」

福井県開発米「さかほまれ」は、山田錦に代わる福井県独自の吟醸酒米品種を目標に、福井県農業試験場、福井県食品加工研究所、福井県酒造組合が2010年から新品種開発に取り組んだもので、福井県オリジナルの「越の雫」と「山田錦」の交配によって誕生し、2018年に新品種登録されています。令和元酒造年度に福井県酒造組合所属の17の酒蔵が、この「さかほまれ」を使ったお酒を2020年4月19日に一斉発売しています。高級酒向けというコンセプトどおり、大半が大吟醸か純米大吟醸酒として発売されました。山田錦は兵庫県開発米で、晩生の晩(兵庫県でも10月末収穫)、倒伏性に難があることから、気候的には新潟県南部までが栽培限界のようですが、北陸では実用的ではないので、オリジナルの吟醸酒適正のある米の開発が求められたものでしょう。また、「越の雫」は供給量に難がるということのようです。また、化学合成農薬と化学肥料の使用を抑制して、福井県特別栽培農産物認定制度の認証を受けています。特徴としては山田錦より耐倒伏性が高く、心白発現率が高く、玄米タンパク質率が低いもので、35%の高精米にも耐えるというものです。今後の鑑評会などでの活躍が期待されます。

FK-802酵母

もう一つの特徴である酵母ですが、福井県開発酵母は1998年にFK-301(ふくいうらら酵母)が、2008年には吟醸用としてFK-501が開発されています。さらにカプロン酸エチル系酵母として2015年にFK-801Cが開発され、さらに選抜を進めて2019年にFK-802が誕生し、早速このお酒に使われていいます。

「御清水」のまちから、世界に向けて

真名鶴酒造さんがある大野市は、地域的には岐阜県に近く、地形的には山間の扇状盆地にあります。周囲を1,000メートル級の山に囲まれたなかで、豊富な伏流水に恵まれており、「御清水(おしょうず)」と呼ばれる湧き水が町のあちこちに湧出していて、独特の街並みの風情を作り出しています。

古い風情を残す街中にある「御清水」と呼ばれる湧き水の井戸。

この町の中心部にある真名鶴酒造さんは、大規模な酒蔵ではなく、蔵元杜氏さんを中心とした小規模手作りの蔵となっています。とは言っても、蔵のホームページで「九頭竜川の上流に位置し、四方を1000m級の山々に囲まれた水と緑豊かな扇 状盆地で,酒造好適米「五百万石」の特産地でもあり,名水百選「御清水(おしょうず)」の清烈な水と 雪深く厳寒な気候とも相まって「神が酒造りのために創られた地」と云われるほど素晴らしい場所です」と紹介されている地で、全製品吟醸規格の高級酒専門蔵として海外への輸出なども主要な事業となっています。こうした酒造りは現蔵元さんが、東京農大を卒業して昭和63年に戻ってからで、当時は「真名鶴といえば地元では有名な安酒」だったというお話には驚きます。高品質化とオリジナリティを追求するなかで、全国新酒鑑評会でも金賞、入賞の常連になっています。一方、県の支援事業などを使って輸出に着手し、輸出専用酒を醸造するという取り組みが成功して、着実に販路を広げるなど、全国的に著名な酒蔵となっています。

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