山名酒造「奥丹波 無我無心 純米大吟醸」R1BY 兵庫県丹波市

兵庫県丹波市市島地区の山名酒造さんの新作「奥丹波 無我無心 純米大吟醸」です。このお酒は令和元酒造年度全国新酒鑑評会に出品し、入賞(決審は中止のため金賞選定は無し)した醪から搾ったものですが、このお酒は無濾過無加水の生酒となっています。2020年3月に発売となり、数量は限定されています。2020年3月製造。
奥丹波 無我無心 純米大吟醸 500ml 2,970円

[Okutanba Muga-musin junmai-daiginjo] Brewery:Yamanasyuzo, Hyogo pref, Tanba city, Specific designations:Junmai-daiginjo-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki ,Degree of rice polishing:33% , Pasteurize:no pasteurized ,Yeast:Meiri ,Yeast starter:Sokujo-moto method, Alc%:16%, Fragrance:apple,Taste:fruity

心血を注いだ珠玉の作品

原料米は兵庫県産で特等級の山田錦。精米歩合は33%という高精米です。製麹は蓋麹法で種麹は伝統の「ひかみもやし」。酒母は速醸酛で酵母は小川明利酵母となっています。仕込は300キロほどの小仕込み。アルコール度は16度で日本酒度は+1となっています。鑑評会出品酒の醪ですが、こちらは上槽は槽搾りで、無濾過の生酒となっています。もちろんおりが絡むようなものではありません。

藏の季刊誌「OKUTAMBA」最新号の巻頭はこの「無我無心」が取り上げられています。

豊な色彩と美しい透明感

甘いリンゴの香りが正調に立ちのぼります。口に含むと、果実的な甘味と酸味が溢れるように、滴るように広がります。豊かな色彩を感じる味わい。一方で美しい透明感も。口の中にとどめながらたっぷりとした味わいを堪能していると、いつのまにか静かにキレて華やかな余韻を残します。鑑評会出品酒は鏡のような水面を感じることが多いですが、このお酒は美しいだけではないダイナミックな流れを感じます。山名酒造さんらしい技を注ぎ込みながら造られる、いつもの「奥丹波」とは少し異なった新しい世界。「珠玉」という言葉に相応しいじっくりと楽しみたい逸品です。

久しぶりの鑑評会出品

平成16酒造年度全国新酒鑑評会で金賞を受賞して以来の受賞ですが、この間は出品しておらず、今回が久しぶりの出品での入賞となっています。最初から出品するつもりだったかはわかりませんが、33%という鑑評会グレードの精米や小仕込みの醪をはじめ細部まで念の入った造り込みは、ある程度は視野に入っていたのかも知れません。一部地元向けの本醸造を除いて純米酒に特化した酒造りで、「純米」での出品は自然ですが、私は純米での金賞を最も期待している酒蔵なので、今回のコロナウイルス感染拡大による決審の中止は本当に残念です。ただし、来年も出品されるかどうかはわかりません。

丹波の山並みに囲まれ、南北に通じる氷上回廊。酒蔵付近の5月の風景

「丹州氷上之地酒」

「丹州氷上之地酒」と銘打たれています。現在の丹波市に合併する前は氷上郡市島町で、「氷上(ひかみ)」の名前は高校名をはじめ地域のそこここに残っています。その一つが「ひかみもやし」と名付けられた伝統の種麹で、ひかみ発酵から大阪の樋口松之助商店さんに譲渡(1996年 平成8年)され、「ひかみ」の名前で数種販売されています。季刊で発行される「OKUTAMBA」の中にも「太古の昔より動植物が往来邂逅した氷上回廊とよばれるこの土地で培養されたもの」と紹介されています。そう言えば、日本海側の丹後地方から東西を囲む山を縫って瀬戸内海へ抜けていく回廊となっており、文化のみならず更に遡って自然の通路となっていることに気づき、この地方の独特の豊さに想いを馳せることができました。

毎号読み応えのある「OKUTAMBA」です。種切りをするのは丹波杜氏組合組合長の青木杜氏さん。

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