灘・御影郷にある安福又四郎商店さんの「大黒正宗 純米吟醸 無濾過生酒原酒」です。2018年3月30日に29BYも発売されましたが、こちらは28BYです。今回は1年の熟成を選びました。2018年3月製造。
大黒正宗 純米吟醸 無濾過生酒原酒 720ml 1,750円(税込)
兵庫夢錦の純米吟醸生原酒
こちらは、全量兵庫夢錦を使った純米吟醸の無濾過生原酒になります。精米歩合は60%で酒母は速醸、酵母は非公開でアルコール度は17度となっています。日本酒度は+2.5、酸度2.3、アミノ酸度1.5と濃醇さを期待させる値となっています。なお、製造場は白鶴酒造さんの本店二号蔵です。こちらの蔵では30%が山田錦、70%が兵庫夢錦と灘の蔵には珍しく兵庫夢錦が中心になっています。
フルーティな輪郭とまろやかな内面
穏やかながら、しっかりした甘やかな吟醸香。まずは、フルーティで滴るような酸味が口中に広がります。その中から甘味が膨らみ、確かな質感と厚みのある旨味を型づくります。生酒らしいフレッシュ感を留めながら、1年の熟成を経たまろやかさを併せ持ちます。
鮮やかで輪郭のはっきりした姿と柔らかな内面を特徴にするフルーティな吟醸酒に仕上がっており、ほのかな苦味を伴って穏やかにキレていきます。29BYと共通する傾向の香味ですが、酵母が変わったのか、27BYとは異なった味わいとなっています。
阪神淡路大震災で木造蔵が全壊
寛永4年・宝暦元年(1751年)に創業。以来、灘で酒造業を営んできましたが、平成7年(1995年)の阪神淡路大震災で木造蔵が全壊します。鉄筋コンクリートの蔵は残りましたが、日本酒市場が縮小するなかで、設備がオーバースケールになるとともに老朽化も進み、建替えを断念します。
白鶴酒造本店二号蔵で醸造を継続
このときに白鶴酒造の社長さんから「灘の蔵を減らしたくない」という申出があり、平成25酒造年度(2013年)から白鶴酒造・本店二号蔵で醸造を継続することになり、現在は年間200石ほどの醸造量になっています。
ところで、これは委託醸造や「設備を借りる」ということではなく、白鶴酒造の醸造計画のなかに「大黒正宗」を設定して、大黒正宗の醸造責任者・井上健一郎氏をはじめ蔵人さんが白鶴のお酒も造りながら、自社ブランドでは製麹、酒母、醪等の管理責任者として酒造りを行うという体制のようです。
従って、従来の所在地には事務所兼直売所のみがあり、残りの敷地にはコンビニや○○うどんの店舗が建っています。なお、隣りは同じく安福家の神戸酒心館です。
自社製造場を持たないため、全国新酒鑑評会には出品できませんが、大阪国税局新酒研究会には「鑑定官室長が認めた者」という特例があり、「大黒正宗がきちんとあることを示すためにも出品することに意味がある」ということで出品されています。
少生産ながら神戸・阪神間では人気蔵
ところで、大黒正宗さんは200石という小規模の割には、意外と言っては失礼ですが、神戸市や阪神間にはコアなファンがいて、根強い人気があります。しかも、酒販店や料飲店など玄人筋が多い印象です。灘五郷の酒蔵としては若干小ぶりですが、その分密度が濃く(熱狂的?)、酒蔵主催のイベントや居酒屋さんの「大黒正宗」を冠したイベントはいつも盛況となっています。