兵庫県加西市の富久錦さんが純青サポーターに贈る平成29酒造年度2回目配布の2本。今期の新しいチャレンジとなる「純青 短稈渡舟 生酛純米 木桶仕込み 生原酒」と、昨年に続く「純青 愛山 生酛純米吟醸 無濾過生酒」です。平成30年3月製造。
純青サポーター 年会費10,000円(税別) 3回6本(各720ml)
[Junsei Aiyama kimoto-junmai-ginjo Muroka] Brewery:Fukunishiki Brewery, Hyogo pref, Kasai city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Aiyama, Degree of rice polishing:60% , Pasteurize:no pasteurized ,Yeast:orijinal ,Yeast starter:Kimoto method, Alc%:16%, Fragrance:apple,pear ,Taste:furuity
生酛2シーズンめ、さらに木桶仕込みで
まずは大正時代に作られ、蔵に残っていた木桶を組みなおして再生し、これを醪タンクとして往時の酒造りにチャレンジしようという「純青 短稈渡舟 生酛純米 木桶仕込み 生原酒」です。今回は原料米も豊倉町営農組合が生産した短稈渡舟を使っています。精米は60%でアルコール度は16度、日本酒度+3、酸度2.2、アミノ酸度1.4。短稈渡舟は山田錦の親株で開発地の滋賀県で栽培が復活され、その後、他県の一部にも広がっています。
もう一つは昨年に初めて取り組んだ愛山を使った「純青 愛山 生酛純米吟醸 無濾過生酒」で、精米は60%。アルコール度は16度、日本酒度+2、酸度1.7、アミノ酸度0.9。愛山の生産者は西脇農園です。酵母はいずれも自社(あるいは蔵付き)酵母というものです。
現代的に洗練されたクラシックな組み合わせ
香りはほのかながらもしっかりとした姿の吟醸香。両方とも開栓当初には僅かな発泡感があり、表立たないものの、しっかりしたフレッシュな甘味を感じます。「純青 短稈渡舟 生酛純米 木桶仕込み 生原酒」はコクのある酸味が特徴。生酛らしい滑らかな舌ざわりとともに穏やかな旨味がゆっくりと満ちていきます。生酛、木桶仕込と短稈渡舟という組み合わせからは「大正時代に思いをはせる」という蔵元の紹介のような古風な味わいを予想しますが、私的には、現代的で洗練された味わいとキレ味という印象です。
一方の「純青 愛山 生酛純米吟醸 無濾過生酒」は爽やかでフルーティな酸味が印象的。甘味とうまくバランスしながら、生酛らしい美しさと複雑さが甘味を長引かせず、適度にキレ上がってくれます。「愛山特有の甘やかな風味」という蔵元の紹介ですが、くどさのない美しい甘味を楽しませてくれます。
今年の純青は「木桶仕込」への挑戦
ホーローの開放タンクとサーマルタンクが並ぶ醸造蔵に木製の桶が二つ登場しました。これは大正5~10年ごろに誂え、蔵に保管されていた木桶を組み直したもの。「次回の純青では木桶に挑戦したい」というお話で、「酒も染み込み、木が呼吸をする。予想外温度変化への対応が試される」なかで、往時の酒造りを体験したいということでした。「木樽特有の保温力と柔らかなニュアンスですばらしい味わいに仕上がりました」と送られてきた「炉火純青VOL14」に記されています。
「短稈渡舟」と「愛山」、難しい米に取り組む
この純米木桶仕込みに使われたのが短稈渡舟です。おそらくはこの木桶の作られた年代を意識して、山田錦より前代の酒米を使うというこではないでしょうか。滋賀県の試験場に残っていたわずかの籾から短稈渡舟(滋賀渡舟2号)を復活した滋賀県の酒蔵で伺うと、「軟質米だが吸水が難しい。急激に水を吸い始めたりして安定しないところが、計算のできる山田錦とは違う」というお話でした。このところは「超軟質米で難しいお米」(炉火純青VOL14)であったようです。
一方の愛山は昨年に続く純米吟醸のお酒です。言わずと知れた「超軟質米」ですが、「超軟質で砕けやすく醸造が難しい曲者の酒米です。使い始めてから3年、ようやくうまく扱えるようになったと思います」(同)というものです。
いずれも昨年からの「生酛造り」によるもの。稲岡社長さん、村崎杜氏さん、蔵人さんら5人(6人?)で、年間650石ほどの造石量ですが、純米蔵となってからの評判も上々で、生酛にもますます力が入っているようです。