大関「大関 灘の生一本 2017年」28BY 兵庫県西宮市

灘酒研究会が主催する灘酒プロジェクトに参加する9蔵それぞれが醸造、販売する「灘の生一本2017年」のうち、大関さんが製造した純米酒です。灘酒研究会酒質審査委員会の認定協議で認定されたものが「灘の生一本」として発売されます。2017年9月製造の数量限定品です。
大関 灘の生一本2017年 720ml 1,170円(税別)

[Ozeki Nada-no-kiippon 2017 ] Brewery:Ozeki Brewery, Hyogo pref, Nishinomiya city, Specific designations:Tokubetsu-junmai-shu, Variety of raw rice:Inishieno-mai, Degree of rice polishing:70% Pasteurize:pasteuraized, Yeast:orijinal, Yeast starter:Mirai-moto method, Alc%:15-16%, Fragrance:, taste:sour and sweet

独自育成米「いにしえの舞」と味醴製法

このお酒は大関の独自育成米である酒米「いにしえの舞」を使用した特別純米酒です。精米は70%。いにしえの舞は大関が兵庫夢錦と早大関の交配によって作り出したもので平成19年に品種登録(第14777号)されています。酒母は大関独自の製法「味醴(みらい)製法」を使用。アルコール度は15度以上16度未満。酸度、アミノ酸度、日本酒度は発表されていません。

乳酸的な独特の酸味が主役

灘酒研究会 酒質審査委員会の認定評価

独特の酸味が終始、主役をつとめます。果実的でもなく、生酛・山廃的でもない、乳酸的な酸味です。これが抑制された甘味を伴ってコクのある「甘酸っぱい」雰囲気を醸しています。もちろん、一般的に言う甘酸っぱさではなく、あくまで日本酒の世界の話ではあります。この個性は好き嫌いが分かれるでしょう。私的にはきめの細かな旨みと締りのよいキレを感じて、これは「あり」かなと思います。
酒質審査委員会の審査結果の表記は、甘辛:やや甘口、味わい:ややコク、香り:おだやか、審査認定表現は「甘酸調和・まろやか・コクがある・豊かな味わい・おだやかな香り」となっています。

酸基醴酛と酵母仕込を合体

大関 宮水井戸場

「味醴製法」とは何かということですが、数年前に発売された新製品「醴 RAI」の製法として開発されたもの。「生酛系的な酒母」と説明されたり、一方で「総体としては酵母仕込か」と問うと「そうだ」というお答え。全体の流れがビジュアルに浮かびませんが、パートごとの説明は以下のようなものかと思います。
「味醴製法」とは明治時代に考案された酸基醴酛(さんきあまざけもと)と酵母仕込を合体させたもの。
酸基醴酛とは米、米麹を高温糖化させた醴(甘酒)をつくり、さらに米の形状がなくなるまで攪拌させることで糖化を促進させる工程と、さらに、乳酸を添加するのではなく、乳酸菌を添加して増殖させることで乳酸を得る工程によって酒母の前段を育成するというもの。その意味では生酛的です。一方で、乳酸菌投入と「同時」に酵母菌を添加することで、大量の酵母菌を同時発酵させるもので、これは酵母仕込的な手法ということになります。この目的は酒質に旨みとコクを造り出そうというものです。ここで、乳酸菌によってはオフフレーバーが生じるため、乳酸菌の選抜・育成に技術的なオリジナリティーがあると説明されています。

「灘の生一本」シリーズとは?

「灘の生一本」というシリーズは、今年は大関、菊正宗、剣菱、櫻正宗、沢の鶴、道灌、日本盛、白鹿、白鶴が参加しています。まず、灘酒研究会酒質審査委員会に原料や製造方法など製品の基本情報と味・香りに関する商品の特徴や表記したい特性のセールスポイントを記して4月28日に審査を申請。5月17日に認定審査会が開催され、申請された表現が一致しているかの他、申請外の特徴の表現評価、品質評価、総合評価が行われ、表現の修正を経て、5月22日の認定会議で認定され、9月を待って、認定された酒質表現がラベルに記されて各社から発売されるというものです。それぞれ大手の酒蔵、もちろん、不合格になるようなものが出品されることはないとは思います。
これらは各蔵とも小ロットの仕込みで営業上の成功は求められていません。そのため、例えば、菊正宗は兵庫恋錦を、白鶴は白鶴錦を、道灌はフクノハナを使い、生酛、山廃。速醸、高温糖化とそれぞれ得意の製法を使うなど、やりたいことを様々に表現した純米酒に仕上げています。それぞれの蔵がどのような酒をつくろうとしているかが、その個性が本当によくわかります。

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