木下酒造「玉川 純米吟醸 Ice Breaker」R1BY 京都府京丹後市

京都府の日本海側、「玉川」ブランドを展開する木下酒造さんの大人気のお酒、「玉川 純米吟醸 Ice Breaker」です。ラベルにはペンギンの描かれているように、冷やして飲む夏酒がコンセプトですが、「燗でも旨い」が評判になっています。2020年8月製造。
純米吟醸 Ice Breaker 500ml 1,210円

[Tamagawa junmaiginjo Ice Breaker] Brewery:Kinoshita Brewery, Kyoto pref, Kyo-tango city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Nihonbare, Degree of rice polishing:60% Pasteurize:no pasteurized ,Yeast:Kyokai No.9 ,Yeast starter:sokujo-moto method, Alc%:17-18% Fragrance: apple, Taste:fruity

日本晴を使った夏酒

原料米は滋賀県産の日本晴と飯米使用となっています。精米歩合は60%。酒母は速醸酛で、酵母は酒販店さんの情報によると協会9号らしいです。アルコール度は17~17.9度。無濾過の生原酒で蔵出しされます。出荷時期は5月~8月でラベルが「涼しげなペンギン」というように氷を入れて飲むのがコンセプト。小売店では発売即売り切れが方々で告知されていますが、蔵まで行けば残っているようです。9月は時期はずれになりますが、しばらく保存して、あえてこの時期に試してみます。
「とにかくロックで旨い。氷の溶け具合にしたがって温度とアルコール度数がエンドレスに変化し、それにともなう味の変化の楽しさもエンドレス」が蔵の紹介文です。一方で、逆に「燗が旨い。しかも、高い温度の燗までいける」というのも有名なお話です。この話の出どころは、「蔵人や蔵の人たち」ではないかと私は思っています。実際、蔵人さんから「私たちはこれを熱い燗で飲む」と聞き、直売店でも「燗もおすすめです」と言われました。

燗でおだやかな広がりに

まずは冷たくひやして。甘い果実の香りが立ち上ります。熟したリンゴのような香りです。口当たりの第一印象は果実的な甘味。続いて爽やかな酸味、さらにドライな辛味がいっぱいに広がります。次々とダイナミックな変転を見せてくれます。さて、熱めの燗にしてみます。甘味と酸味がきれいにバランスして、穏やかにゆっくり広がります。なるほど、印象は一変して、旨味にあふれた「日本酒好き」が好むお酒に変化しました。さらに温度を上げてみました。姿は崩れないものの、やはり無理があります。70℃くらいが限度のようです。キレはいずれも意外に穏やかで、甘味の余韻を残します。

日本酒の付加価値

木下酒造と言えば、まずは杜氏のフィリップ・ハーパーさんが有名ですが、もう一つはハーパーさんが持ち込んだ酵母無添加の山廃酛での酒造りが有名です。さらには中期から長期にわたる熟成酒のラインナップも充実しています。これはハーパーさん自身が「日本酒は付加価値を付けるのが上手くない。熟成(古酒)は付加価値を付ける大きな武器になる」とどこかで語っておられましたので、酒造りの技術の深化やバリエーションの拡大という意味とともに、市場に対するオリジナリティの表明や成功をめざしたものであろうと思います。

市場を洞察する見事さ

そうした意味では、この「Ice Breaker」は異なったコンセプトですが、清々しい青色の瓶とペンギンの絵柄とともに市場を席捲したのは、ユーザーの要求を洞察する慧眼の故で、いつもながらに感心してしまします。本当に、問屋さんまかせの居酒屋から、店主こだわりのチョイスが売り物のお店まで、このお酒が並ぶ姿は見事としか言いようがありません。
ところで、4合瓶(720ml)ではなく、500mlというのはなぜでしょうか。これを考えるのも楽しんでください。

藏は久美浜湾に面しています。蔵近くの久美浜湾の美しい風景

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