山名酒造「奥丹波 Hyogo Sake 85 生原酒」30BY 兵庫県丹波市

丹波市の山名酒造さんが兵庫県の新開発米「Hyogo Sake 85」(ひょうごさけエイティーファイブ)を使った純米吟醸酒「奥丹波Hyogo Sake 85」を発売しました。昨年に続き2シーズン目になる造りで、この生原酒バージョンの他、火入れバージョンもあります。2019年5月製造。蔵元さんでは発売3日で完売したそうです。
奥丹波Hyogo Sake 85 生原酒 720ml 1,836円

2020年「奥丹波 HyogoSake85 無添加仕込 R1BY」はこちらです。

[Okutanba Hyogo Sake 85] Brewery:Yamana-syuzo, Hyogo pref, Tanba city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Hyogo Sake 85, Degree of rice polishing:60% , Pasteurize:no pasteurized ,Yeast:Meiri ,Yeast starter:Sokujo-moto method, Alc%:16%, Fragrance:green apple ,Taste:dry and smooth

新開発米 Hyogo Sake 85

兵庫県立農林水産技術総合センターが開発し、2018年6月に初出荷された「Hyogo Sake 85」を全量使用した純米吟醸酒で、30BYが2シーズン目になります。精米歩合は60%。酒母は速醸酛で酵母は明利酵母です。上槽は槽型(日吉式だそうです)で、今年度は生原酒が追加されました。火入れバージョンは昨年に続いての発売になります。生は数量限定で、火入れも昨年は早々に完売になっています。山名酒造さんの Hyogo Sake 85 は地元丹波市市島町の「ひょうたん農場」が農場内で調達した稲わら、牛糞、籾殻と米ぬかを混ぜて発酵・熟成した堆肥を使う循環農業で育てたもの。

透明感がドライ に

青いリンゴの爽快な香りが立ちます。これはいつもの奥丹波らしい香り。口に含んだ第一印象はスムース。ほのかな酸味と、これに併せた涼やかな甘味。膨らむことなく、流れるように広がりながら、比較的強い苦味を伴って早いキレに結びます。このあたりは酒米の特性でしょうか。また、透明感をもってストレートに抜けていくドライな感覚は、夏の時期によく合いそうです。昨年の印象は少しジューシーなフルーティー感が記憶に残っていますので、ここは生酒に由来するものとかと思います。

季刊「OKUTANBA」2019年夏号はHyogo Sake 85の特集

30年の開発期間をかけ昨年に製品化

初の造りとなる29BYでは、山名酒造さんの他、但馬の此の友酒造さん(特別純米)と香住鶴さん(山廃純米)の3蔵が発売されました。今年度は他の2蔵の情報がないので、30BYの造りはないのか、もしくは熟成を待っているのかは不明です。
「Hyogo Sake 85」は 1986年(昭和61年)に兵系酒八十五号として開発がはじまって以来、30年余りの歳月をかけて2017年11月に品種登録され、2018年6月に最初の酒が蔵出しされました。その系統は山田錦と水原258号の交配で、水原258号は韓国で育成された超多収品種です。この計画の背景については「現在、県北部で栽培されている酒米品種「五百万石」や「兵庫北錦」は、登熟期間の高温化で白未熟粒の発生が多く、北部で発生の多いいもち病にも弱い。このため、地球温暖化の適応策としても、高温登熟耐性といもち病抵抗性の強い良質の酒米品種の育成を目指しました」(兵庫県立農林水産技術総合センター農業技術センター)となっています。

写真は左から雄町、山田錦、Hyogo Sake 85。 稈長 の違いは歴然

Hyogo Sake 85の特長と適正 

その特長は(同)
・成熟期は「五百万石」や「兵庫北錦」よりも3日早い極早生種
・稈長は「五百万石」や「兵庫北錦」とほぼ同等、倒伏については「五百万石」より強い
・いもち病抵抗性は「五百万石」や「兵庫北錦」より強い
・酒造適正は心白が大きく、溶けが良く、粕が少ない。香りが高い
と紹介されています。
また、適正は(同)
・精米歩合60~65%の純米酒、純米吟醸酒
・杜氏や製造業者からは「程よい香りがあり、すっきりとして、のどごしが良い」と高い評価を得ている
となっています。

国道175号線沿いの直売書は特定日以外、年中無休

当然ながらいいことづくめですが、杜氏さんや蔵人さんの話はまだ聞けていません。いずれにせよ、酒米として生き残れるものはほんのわずか。今後、様々なタイプの酒、熟成期間、酒造方法の取り組みや酵母との相性など、数年の実造の試みを経て、従来の酒米にとって代われるかが問われるでしょう。
なお、品種名がローマ字表記「Hyogo Sake 85」となっているのは、「この新品種を使用した日本酒の輸出を目指し、香港、EUなどに酒どころ“兵庫”をアピールするため、酒米としては全国はじめて」(同)の取り組みとされています。

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