2015/11/29投稿記事 灘五郷のうち西宮郷の日本盛さんの「純米吟醸 惣花(そうはな)」です。H27年11月製造ですが、年間醸造のため27BYとしました。もちろん火入れです。
特徴 伝統の酒 惣花ブランド を受け継ぐ
こちらは灘の大手酒蔵である日本盛の純米吟醸の代表ブランドになり、従って、生産量も相当な量に上ると思います。米は「山田錦をはじめとする」と表記されていますので、山田錦と後は五百万石あたりかと思います。精米は55%。姫路市網干区にある自社精米工場での精米です。アルコール度は15~16度。日本酒度は-4、酸度は1.6と表記されています。酵母は自社保有の惣花酵母、酒母は高温糖化酛だそうです。
印象 穏やかで整ったバランス
お味ですが、同梱の案内書には「甘・酸・辛・苦・渋の五味が見事に調和した」となっています。確かにバランスはうまくとれていて、日本酒度-4ですが甘みが強いと感じないのは高めの酸との調和がとれているからだと思います。最初の口当たりは特徴なく、中でグッと膨らんで、後は静かにキレていくという印象です。吟醸香もおとなしめで、案内書にある「他にはない芳醇な香り、華麗な極味」という派手な感じではなく、ごく静かでおとなしい純米吟醸酒といった印象です。際立った特徴があるわけではありませんが、灘の大手蔵らしい「優・良・可・不可」で言えば「良」に位置付けられる、結構うまい酒だと思います。客観的に見て大概の地酒よりよくできていると思います。もちろんこの蔵のフラッグシップである純米大吟醸「雑候屋甚兵衛(ざこうやじんべえ)」の完成度高い濃醇さに比べれば、やはり印象は控えるとは思います。
惣花酵母
「惣花酵母」ですが、自社開発というわけではなく、「譲り受けた」というお話で、系統的には熊本9号系ということでした。この「惣花」という名前も江戸時代に灘の名醸家、岸田忠左衛門が完成させた酒を大阪の廣岡助五郎商店が商標を取得して販売。商標は㈱加島屋に引き継がれ、この間宮内庁御用酒に指定されるなどしたブランドで、現在も「製造元」ではなく「醸造詰元」となっています。
明治時代創業の異色蔵
こちらの蔵は、江戸時代の下り酒と海運業で財を成した他の灘の大手蔵とは違い、明治22年(1889年)に西宮市内の酒蔵を含む青年実業家が集まって創業。今回11月28日の「秋季蔵開き」に伺いました。酒づくりは年間醸造で、精米の洗米、自動浸漬から連続蒸米、機械製麹とエアーを使ったホースで米が送られ自動処理されます。酒母は高温糖化酛と普通酒は酵母仕込みで造るそうで、酵母も大吟醸に至るまで自社酵母。酵母仕込みに使うのも自社の固形酵母というお話でした。中村杜氏さん自ら蔵見学の案内をいただきました。いくつも並んだ醪のタンクは8万リットルという巨大なもので、見慣れた円筒形ではなく、直方体でハッチのような窓が空いたものでした。大吟醸などは1万8千リットルの円筒形です。留添直後のタンクは発酵によるに炭酸ガスで吸い込むと息が詰まるほど。吟醸のタンクではカプロン酸エチルの香りに圧倒されました。
純米吟醸 惣花 720ml 1,728円
兵庫県西宮市用海町4番57号
直売は酒蔵併設の「酒蔵通り煉瓦館」で