剣菱酒造「劔菱 灘の生一本 2018年」19BY兵庫県神戸市

灘酒研究会・酒質審査委員会が認定する「灘の生一本」プロジェクトには、今年、2018年は10蔵が参加しました。このうち剣菱酒造さんが認定を受けた10年熟成の純米酒です。2018年8月31日製造。
劔菱 灘の生一本 2018年認定 720ml 1,500円(外税)
[Kenbishi Nadano-kiippon-2018] Brewery:Kenbishi Brewery, Hyogo pref, Kobe city, Specific designations:Junmai-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki ,Degree of rice polishing:75% , Pasteurize:pasteurized ,Yeast:Kenbishi-yeast ,Yeast starter:Yamahai-moto method, Alc%:17.5%, Fragrance:nuts dryfluits,Taste:rich strong

10年の熟成を常温で

このお酒の製造所と表記された魚崎南町の「中蔵」

それぞれの酒蔵が特長と個性を競ったお酒を出品します。剣菱さんは兵庫県産山田錦を使用。精米歩合は75%です。酒母は山廃酛で、アルコール度は17.5度となっています。この酒は上槽後に軽い濾過を実施、火入れを行った後、熟成に入ります。剣菱さんと言えば熟成が特徴ですが、今回は平成19酒造年度で醸造したものを10年間、常温(25℃)で熟成させたもの。比較的低精米とは言え、山田錦の10年熟成でこの値段は原価割れかと思います。さらに剣菱さんはブレンドを行っていつでも同じ香味に揃えるのがポリシーですが、このお酒は「単一の製造場という条件」と「出荷量が少ない」ということで一つのタンクのみとなっています。

味わい濃醇にして鮮やか

光が淡く差し込む熟成の色合いとナッツやドライフルーツの香り。口に含むと突き抜け膨らむ濃醇な旨味。それでいてさわやかにさえ感じるまろやかさ。崩れない姿。鮮やかにキレ上がる後味。すべてに劍菱らしさが詰められた逸品です。それは酸のきめ細かい丸みとしっかりした甘味の土台。10年を費やして辛味を包み込んだやさしさでしょうか。この熟成の味わいが鼻につくとこなく、不思議な透明感を記憶に刻みます。
認定表記は「じっくりと丁寧に熟成させた香りと黄金色。口に含むと広がる濃醇な旨味とコクが調和されたお酒であることを認定」とあり、酒質審査結果は甘辛は「中」、濃淡は「コク」、香りは「熟成」となっています。

「灘の生一本」認定というプロジェクト

この酒の加工所と表記されている深江浜町の「浜蔵」と精米工場

このお酒は毎年行われる灘酒研究会・酒質審査委員会の「灘の生一本」認定を受けたお酒で、毎年、審査を申込んだ出品酒に対して酒質審査と表現内容の審査が行われ、合格したものが統一名称「灘の生一本」として一斉に発売されます。2018年は新たに小山本家酒造灘浜福鶴蔵を加えて10蔵が参加しました。発売日は9月11日となりますが、これに先立って9月8日に神戸市内で特別先行試飲会が行われ、今年の10本が披露されました。「灘五郷の単一の製造場のみで醸造した純米酒」というのが条件になっています。

自主判断から統一基準へ

このプロジェクトは「統一基準で味や香りを審査する」というのが特徴で、これは日本酒の「品質保証」という未だ手つかずの分野に乗り出すチャレンジだと理解しています。
まず各社から「原料や製造方法など基本情報」「味・香りに関する特徴・セールスポイント」を添えて審査の申込み。書類審査は「原料・製造方法に関する情報の明確化」「味わいや香りタイプの選定」「味覚表現が味に関して26種、香りに関して13種の統一基準との照合」を行い評価シートを作成。審査員が評価シートをもとに官能評価を実施。総合評価、評価点数、コメントをもとに各項目の認定を協議。総合評価不合格は不認定で、認定基準を満たさない項目は酒質表現として使用不可となるというものです。
従って、不合格は論外ですが、これまで自主判断で行ってきた味と香りの表現が統一されることになります。このプロセスを酒蔵から半ば独立した酒造技術者の横断的組織が行うことに意義があるものと思います。

灘酒研究会101年の歴史

9月8日に神戸市内で開催された研究会主催の特別先行試飲会

灘酒研究会は1917年設立と101年の歴史があります。灘五郷と近隣の酒造技術者が会員となり、発足時13名、現在は90名が加盟しています。最盛期の180名余からは半減していますが、この間に技術向上に向けた活動を行い、特に日本酒用語・灘酒関連用語の辞典「灘の酒用語集(1979年出版)」と「改定灘の酒用語集(1997年出版)」は貴重で、酒蔵の技術者が使う最も信頼度の高い用語集です。なお、この灘の酒用語集はWEB版(抄本)もあって、英語版はPhilip Harperさんが監修しておられます。
現在は水部会・米部会・醸造部会・酒質部会・管理部会・編集部会が研究活動を行っており、2010年にはこの「灘の生一本」の酒質を認定審査する特別研究グループとして酒質審査委員会が発足しています。

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