菊正宗酒造「特別純米酒 嘉宝蔵 雅」28BY 兵庫県・神戸市

兵庫県の灘五郷のうち御影郷にある大手酒蔵、菊正宗酒造を代表する酒「特別純米酒 嘉宝蔵 雅」28Byです。嘉宝蔵とは菊政宗酒造の季節醸造蔵。一番から四番は廃止され、現在は嘉宝蔵五番のみが稼働しています。

Kikumasamune Sake Breweries is a leading manufacturer located in the Nada area. Kikumasamune Sake Breweries has excellent technology in traditional yeast cultivation method called “Kimoto” and has excellent research achievements. This “Special junmai sake Kahogura Miyabi” is a high quality sake using the highest quality rice (Yamadanishiki), using excellent technique of “Kimoto”.

印象 ”灘酒”を “菊正宗”を “生酛”を代表する酒

まず口に含むと、旨みがいっぱいに広がります。この旨みは米の甘みのふくらみと言ってよいでしょう。しかし単純な甘味などではなく、酸や苦みや渋み、さらには辛味を伴いながら一体となってつくりだす世界で、キレていった後には「押し味」と言いつつも、意外に軽快な余韻が残ります。最初のインパクトではなく、飲み継ぐことで味わいを感じるお酒です。
ラベルには甘辛「辛口」、濃淡「濃醇」と5段階の両極の評価が記されています。しかし、辛口とは言っても薄っぺらな辛口ではなく、複雑な幅と質感があり、生酛らしい厚みある濃醇さの一方、丹波杜氏らしい綺麗なお酒に仕上がっています。こちらの蔵のスタンダードで、スーパーでも買えるお酒ですが、さすがに見事な味わいです。純米酒で4合瓶2,000円というお値段は他所の蔵ではなかなか付けられないでしょうが、その価値はあると思います。

特徴 最上の原料と隅々までかけられた手間

米は兵庫県三木市吉川特A地区の契約集落である嘉納会が育てる山田錦を100%使用。精米歩合は65%です。
仕込水は西宮市内のわずか300m四方ほどの広がりしかない宮水地帯に15本の井戸を所有する宮水。アルコール度は17.5度で、加水調整をしていない原酒です。日本酒度は+6と味わった感覚からは意外に高い値となっています。酒母はもちろん生酛。
酵母は自社酵母であるキクマサ酵母です。現在の酵母は各社の自社酵母も含め大半が協会酵母系であるのに対して、このキクマサ酵母は野生酵母系です。
その質の高さから最も菊正宗を代表するお酒と私は思っていますが、これが料飲店で出されたことは一度もありません。値段が高く、利幅も取れないので敬遠されるのかなと思いますが、残念なことに思います。

嘉宝蔵五番の麹室

“辛口”のキクマサではなく、”生酛”の菊正

一般的には、そしてCMでも「辛口のキクマサ」ですが、マニア的には「生酛の菊正」です。現在、菊正宗ブランドの上撰以上のお酒は全て生酛ですが、これは写真の嘉宝蔵五番で造られています。蔵の酒母室に並ぶ大量の半切桶は現役で使われています。菊正宗では山卸を足踏みで行うのが特徴で、最盛期には他部門も動員されるそうで、「空気を出すためには底まで踏み切る必要があり、体重が重い方が有利」だそうです。
歴史的にも、研究成果を見ても、菊正宗抜きに生酛は語れません。全国の酒造組合などが生酛の研修会をする場合は菊正宗に講師依頼が来るそうです。その理由は「永年にわたる生酛のデータの蓄積があるのは菊正宗くらい」ということのようで、菊正宗総合研究所でも生酛をテーマとした研究が進められてきました。その一つの成果として、酵母育成の特徴が「速醸酛ではリノール酸とパルミチン酸を利用して生育するのに対して、生酛ではリノール酸が乳酸の生育に利用される結果、酵母はパルミチン酸を多く取りこんで生育するため、エタノール耐性に優れた酵母となる」と解明されています。

現役で使われている半切桶

「清酒醸造にみられる酵母のエタノール耐性獲得機構」

オールドファンにはあの歌が

万治2年(1659年)に嘉納治郎太夫が御影村で創業。嘉納家の本家で「本嘉納」と呼ばれ、一方、同じく御影の白鶴酒造は「白嘉納」と呼ばれています。2014年には17,318klの製造量で第8位。毎年2月には蔵開きが開催されます。数ある蔵開きのなかでも、充実度は一番でしょう。記念館名誉館長の名調子も聴きものです。ただし、あまりに多数の来場者で少々疲れます。

しかし、まあ菊正宗と言えば、あの歌でしょう。西田佐知子さんが歌う「初めての街で」。日本酒業界が元気だったころの懐かしい曲です。

嘉宝蔵 雅 720ml 2,160円(税込み参考価格)

(本社)神戸市東灘区御影本町1-17-15
酒造記念館や嘉宝蔵、菊栄蔵は神戸市東灘区魚崎西町1丁目
最寄りの駅は阪神電鉄魚崎駅です。

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