稲見酒造「葵鶴 大吟古酒」19BY以前 兵庫県三木市

山田錦の一大産地、兵庫県三木市に蔵を構える稲見酒蔵さんの長期熟成酒「葵鶴 大吟古酒」です。10年以上の熟成期間を経て、平成30年(2018年)5月に蔵出しされました。
葵鶴 大吟古酒 720ml 3,190円

Long-term aged sake aged over 10 years. It won the Bronze Award in SAKE · Old Sake category in “IWC 2016, 2017”. The tasting notes at that time were evaluated as “Toasted nuts, banana cake aromas on the nose with light, brisk citrus, nutty palate. Long finish”.
[AOI-TSURU Daigin-kosyu] Brewery:Inami Brewery, Hyogo pref Miki city, Specific designations:Junmai-daiginjo-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki, Degree of rice polishing:50% Pasteurize:pasteurized ,Yeast:unknown ,Yeast starter:sokujo-moto-method, Alc%:15%  Fragrance:nuts, Taste: rich

10年以上の長期熟成酒

湯の山街道に面した歴史的建造物を右に回りこんだところに事務所があります。

三木市特A地区産の山田錦を全量使用。精米歩合は50%の純米大吟醸酒です。酒母は速醸酛で酵母は不明です。アルコール度は15度。加水、濾過、火入れ、2年間の低温熟成の後に常温熟成し、合計10年以上の貯蔵を経た「長期熟成酒」となっています。蔵の紹介文によると、「通常の日本酒を長期間貯蔵するのではなく、長期熟成に適した日本酒を特別に醸造し、タンクなどで熟成させる」となっています。常温と言っても、25度を超えるようなことは適当ではなく、ここでは冷蔵庫に保管されているようなので、ある程度の安定温度だと思います。

酸味流れるドライな淡熟タイプ

光に映える淡い琥珀色

長期熟成酒研究会によると、長期熟成酒の特徴は「琥珀のような色」「独特な熟成香」「柔らかく深い味わい」となっています。まずは色合いですが、写真どおりの少し淡い琥珀色。上立香はほのかなナッツの香ばしさで、口中香では熟成香が強く開きます。5℃というのが蔵のお勧め。口当たりの柔らかさ、舌触りの滑らかさは熟成酒らしいところ。意外にドライな全体像で、第一印象の、バランスのよい酸味がまろやかに流れながら、甘味は抑えられています。熟成酒としては「淡熟」なタイプなのはベースが50%精米の純米大吟醸であるところでしょうか。少しの苦味を残しながら、まとまりのよい後味に結びます。IWCでの評価とは異なる印象ですが、長期熟成酒と言ってもインパクトの強さではなく、料理に寄り添う食中酒としての存在感が特徴です。

IWC ブロンズ賞を受賞

平成27年5月に神戸市で開かれた「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2016」古酒部門でブロンズ賞を受賞し、翌年も同賞を受賞しています。受賞のテイスティングノートの表現は、「Toasted nuts,banana cake aromas on the nose with light,brisk citrus,nutty palate.Long finish 」。

「長期熟成酒研究会」会員

また、稲見酒造は「長期熟成酒研究会」の会員として、20年以上にわたり長期熟成酒に取り組んでいます。「長期熟成酒研究会」は「熟成古酒の製造に関する技術交流と市場の開発を目的とした、酒造会社による任意団体として昭和60年(1985年)に設立され」たもので、現在は酒造27社を含む47社が加盟しています。

現在の醸造蔵

熟成による変化とは

研究会では「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を熟成古酒と定義しています。その上で、①醸造の方法、②貯蔵・熟成の方法、③熟成年数の3点から「濃塾タイプ」「中間タイプ」「淡熟タイプ」に分類しています。このお酒は分類に従うと「中間タイプ」に該当するようです。

色の変化

糖とアミノ酸の重合(アミノ・カルボニル反応)によって生成されるメラノイジンを主に、麹由来のトリプトファンがアルデヒドと反応し緑色蛍光物質ハルマンを生成する。

香りの変化

カルボニル化合物の中のソトロンは熟成古酒の主要な香成分で、その濃度により黒糖、カラメルなどと香の感じ方が異なる。また、エステル類のコハク酸ジエステルは蜂蜜様香となり、イソバレルアルデヒドはナッツ様香の成分となる。
一方で、老香の原因成分であるポリスルフィドは、熟成が進むにつれ相対的に減少する。

味の変化

苦味成分はたんぱく質の分解によるプロリルロイシン無水物となり、苦味を増しながら、味を濃厚・複雑にして、しっかりした後味となる。また、くどく感じる要因のコハク酸はスッキリした酸味のコハク酸モノエチルエステルに、鋭い酸味のリンゴ酸はエステル化して、柔らかいリンゴ酸モノエチルエステルとなる。

物理的変化

熟成をさせる過程で、アルコール分子が水分子のクラスターのすき間に入りこみ、水分子がアルコール分子を包み込むことで、まろやかな味になる。

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