長龍酒造「稲の国の稲の酒 2013年醸造 特別純米酒」24BY 奈良県広陵町

奈良県北葛城郡広陵町にある長龍酒造さんの熟成酒、「稲の国の稲の酒 2013年醸造 特別純米酒」です。平成24酒造年度に仕込んで低温熟成の後に蔵出しされたお酒。2013年は2013CYの意味で、醸造年度で表現すると24BYになりますが、蔵の方針として年度表現は暦年としているそうです。平成29年11月製造の後生です。

稲の国の稲の酒 2013年醸造 特別純米酒 720ml 1,350円

[Inenokuni-no-inenosake 2013 tokubetu-junmaisyu ] Brewery:Choryu Brewery, Nara pref  Koryo-cho-city, Specific designations:Tokubetsu-Junmai-shu, Variety of raw rice:Tsuyubakaze, Degree of rice polishing:65%  Pasteurize: pasterized  ,Yeast:orijinal ,Yeast starter:sokujo-moto method, Alc%:15.5%  Fragrance:nuts, Taste: rich

露葉風を瓶燗低温熟成で

広陵蔵内の仕込みタンク

原料米は奈良県山添村の契約農家で栽培された、奈良県の酒米奨励品種の露葉風を全量使用。精米歩合は65%。酒母は速醸で酵母は9号系自社酵母です。アルコール度は15度以上16度未満。日本酒度は+1.0、酸度は1.6、アミノ酸度は1.7です。特定名称表示は特別純米酒。瓶燗の後30ヶ月の低温熟成経過後、さらに出荷時期を計って蔵出しされます。露葉風は精米での成型が安定せず、技術的には難しい米になるようですが、結果的にはこの少し野性的な味わいを引き出すようです。

熟成を抑制しながら旨み豊かな味わい

質感のある旨みがたっぷりと力強く広がりますが、濃厚さを前面に押し出したお酒ではありません。また、口中香で熟成によるほのかなメラノイジンの香りとカラメル様の味わいが独特の魅力を作り出しますが、熟成酒としては控えめです。「タンクでは熟成が進み過ぎる」ため瓶燗で火入れをして低温で熟成に入ることで、熟成をコントロールしてバランスを保ったという姿のよいお酒です。ひやでは酸味が全体を包み込みます。燗ではこの酸味が軽やかになり、入れ替わって辛味が立ってきます。いずれにしてもこの質感のベースにはしっかりした米の甘味がありますが、表立つことはなく、キレのよいよく締まった後口が旨みの余韻を残します。私的にはやはり燗を選びます。

雄町と露葉風で「ビンテージ純米酒」シリーズを展開

蒸米設備の甑と放冷機

「ビンテージ純米酒」といシリーズが、岡山県産雄町を使った「ふた穂」と奈良県産露葉風を使った「稲の国の稲の酒」で展開されますが、このうちの2013年露葉風バージョンになります。2017年11月現在は2012年醸造の「ふた穂」と2013年醸造の「稲の国の稲の酒」の他、2009年醸造「ふた穂 雄町 生もと純米吟醸」が販売されています。なお、長期熟成シリーズは「1992年醸造本醸造原酒」をベースに、「純米大吟醸古酒」を少量ブレンドした「長龍 熟成古酒」があり、「裏メニューみたいなもの」だそうです。
露葉風は栽培が途絶えていたものを平成14年(2002年)に山添村で復活。露葉風そのものも、栽培が難しく収量も少ないため、なかなか引き受けてくれる農家がなかく、値段も高くなるそうですが、奈良県内でも露葉風を使う酒蔵が増えたことで、やっと米の確保も軌道に乗ってきたようです。

「なるほどの酒」のキャッチコピーが懐かしい

2017/11/12蔵開きの「きき当て」コーナー

1923年に天理市の飯田酒造場から独立。本家の「長龍」120本を元手に大阪府八尾市で小売業を創業。後に長龍酒造株式会社を設立して八尾工場を竣工。「慶雲長龍」ブランドを発売します。現在も半被のえりにかかれた「なるほどの酒」のキャッチコピー。「なるほどよい酒、長龍」というCMソングはこのころでしょうか。
1979年に広陵町に広陵酒造株式会社を設立して、これが現在の広陵蔵の前身になります。後に2社が合併。現在、醸造は広陵蔵で行い、八尾工場は貯蔵蔵になっています。4年前に南部杜氏の引退とともに杜氏制度を廃止し、社員制度に移行しています。飯田グループの中核会社ですが、グループには精米機製造と岡山、兵庫工場で委託精米を受けている新中野工業があり、精米はこちらで。雄町は15年前から岡山県内の農家との契約で確保されています。

スポンサーリンク

スポンサーリンク
スポンサーリンク