菊正宗酒造「菊正宗 天使の吐息 純米大吟醸スパークリング」30BY 兵庫県神戸市

菊正宗酒造さんが2019年1月1日に発売(1月10日蔵出)した新製品「菊正宗 天使の吐息 純米大吟醸スパークリング」です。近年、従来と異なる様々なお酒を発表している菊正宗が「満を持して新登場」と掲げた発泡性・低アルコールの純米大吟醸酒です。2019年1月製造。ネット販売限定、数量限定。
菊正宗 天使の吐息 純米大吟醸スパークリング 720ml 4,860円

[Kikumasamune Le souffle d’ange Junmai-daiginjo-shu Sparkling] Brewery:Kikumasamune Brewery, Hyogo pref, Kobe city, Specific designations:Junmai-daiginjo-shu, Variety of raw rice:nodisclosed ,Degree of rice polishing:50% , Pasteurize:pasteurized ,Yeast:orijinal(new) ,Yeast starter:Sokujo-moto method, Alc%:10.5%, Fragrance:pear,apple,  Taste:fruity

新開発酵母が製品化のキーポイント

スペックについてはほとんど表記されていません。まず、精米歩合は50%ですが、原料米についての表記はありません。酒母は最近の傾向から考えると速醸酛だと思いますが、新開発の酵母が使われており、「かなり特徴的」というオリジナル酵母を得たことが製品開発のキーになったようです。アルコール度は10.5%と低アルコールで日本酒度は-32となっています。低アルコールの手法は発酵を醪の途中で止めるというもの。炭酸ガスは瓶内発酵を継続することで得て、その後、瓶燗で止めるというもの。従って、火入れは「有り」となりますが、冷蔵が必須となっています。

王冠を栓抜きで抜くという特異なスタイル。開栓飲み切りが必要です。

強い発泡性 濃醇フルーティな味わい

開栓してグラスに注ぐと溢れる泡立ちが印象的です。予想以上に強い発泡性です。立ち上がる香りと口中香はともに豊かです。数人で試飲しましたが、「熟した洋梨の香り」「よく熟したリンゴの香り」「オリが絡む後半はバナナの香り」と意見が分かれました。味わいはたっぷりとした甘味が支配します。-32という日本酒度から予想されるとおりですが、強い炭酸ガスによって緩和され、だれることなく清澄さの範囲内に収まります。酸味は柑橘を思わせる果実的な鮮やかさを際立たせながら、乳酸的な優しい甘酸っぱさも潜みます。最後は八朔のようなほろ苦さを伴った酸味でキレながら、比較的長い甘味の後味を残します。全体として純米大吟醸としては異例なほどのフルーティな濃醇さが特徴で、低いアルコール度と相まってとりわけ飲みやすいお酒となっています。
冷蔵保存が条件で、オリを底にゆっくり沈殿させます。「1本で2種類の味わいが楽しめます」というキャッチフレーズ。最初はスパ-クリングとして、後半はオリを混ぜて「にごり酒」としてというのが酒蔵のおすすめです。実際はオリが絡むことで若干の複雑さとまろやかさが生まれますが、味わいが根本的に異なるわけではありません。

発泡清酒を低アルコールで

主要なテーマは「発泡清酒」というもの。20年前から構想がありつつ、3年前から開発が加速したということです。単なる発泡清酒ではこんなに時間がかかるとは思われないので、「低アルコール」というテーマが一方にあり、これを高い次元で実現することが困難な課題だったと推測します。醸造蔵である菊栄蔵と菊正宗酒造総合研究所の協力でこのお酒が生み出されています。

菊栄蔵の酒母管理室

発泡性

発泡清酒の製法としては「瓶内発酵」「炭酸ガス充填」「活性にごり酒」があり、「炭酸ガス充填」は泡が荒く、苦味を強く感じるという欠点があり、一方、「活性にごり酒」は酒質が安定しないという弱点があるように思います。実際、醪を荒濾ししてボトリングした生酒は、瓶内発酵しながら時間経過によって発泡性も味わいも次々に変化することを経験しています。これはこれでおもしろいですが、ベストな飲み頃は運しだい、出来は年しだいというのは、大手メーカーでは許されないでしょう。
これは酵母の活性が残る段階で上槽し(上槽も低温環境下で行うなどがsるのかも知れません)、おりを残しつつボトリングすることで瓶内継続発酵をさせてシャンパンのような微細な泡を生み出そうというもので、瓶もシャンパン型で底にはキックという凹みのある形状です。さらにタイミングをみて瓶燗を行い、ベストな状態で安定させるという方法のようです。「活性にごり酒」でこれをやるのは無理がありそうです。

低アルコール

低アルコール酒の手法は加水やピルビン酸低生産性酵母などいくつかあるようですが、これは醪の途中で発酵を抑制するというもの。一般にはこれをやると雑味やオフフレーバーが爆発すると聞いています。そこで新開発酵母の登場となります。かねてより「オフフレーバーの少ない酵母の開発」を続けるなかで、「つわり香という嫌なフレーバーの発生が少ない酵母をいくつかテストした結果、香りやコクのバランスがとれたものができあがりました」というもので、これが「日本酒本来の美味しさを保つ」とともに「香りを出しつつ甘味をもたせる」お酒に結実したようです。
「つわり香」は灘の酒用語集で「清酒醪で酵母の増殖が遅れたとき、乳酸菌などの細菌類が異常に増殖したとき、清酒が火落ちしたときに生じるヨーグルト様の香りである。香りの本体はジアセチル・揮発酸などである。火落香と大体同系統の臭気であるが、火落香は製品の貯蔵中または瓶詰製品として出荷中に火落菌によって生じた香りをいうのに対して、つわり香は醸造工程中に細菌が異常繁殖して生じる香りをいう」「若い醪に醸造アルコールを添加して急に発酵を停止させたり、アルコール添加後ただちに醪を濾すとつわり香が出ることがあるともいわれている」と解説されています。

円筒形のしゃれたボックスに入っています。

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