太田酒造「千代田蔵 フクノハナ 特別純米原酒(15度)」29BY 兵庫県神戸市

滋賀県草津市に本社があり、「道灌」をメインブランドにする太田酒造さんが、灘・魚崎郷にもつ千代田蔵の「千代田蔵 フクノハナ 特別純米原酒」です。平成30年10月製造。同じ名称・内容でアルコール度18度のタイプもあります。
千代田蔵 フクノハナ 特別純米原酒 720ml 1,428円

[Otasyuzo Chiyodagura Fukunohana Tokubetsu-junmai-gensyu ] Brewery:Ota-syuzo, , Hyogo pref, Kobe-city, Specific designations:Tokubetsu-junmai-shu, Variety of raw rice:Fukunohana, Degree of rice polishing:60% Pasteurize:pasteurize , Yeast:Meiri, Yeast starter:sokujo-moto-method, Alc%:15%, Fragrance:muskat, Taste:fluity

15度の原酒 無濾過の一回火入れ

原料米は兵庫県豊岡市出石町産のフクノハナを全量使用。精米歩合は60%です。酒母は速醸で酵母は明利酵母です。アルコール度は15度。原酒で15度というのが特徴の一つです。「一つ火」と表示されている一回火入れの無濾過原酒です。1回は後生であろうと思います。
神戸市東灘区の濱田屋さんのHPによると、糖度10.5、PH4.55となっています。数値からは結構、酸度高めの印象です。

水彩画の色彩を感じる甘味と酸味

水彩画を思わせる穏やかで美しい色彩を感じます。まずは、純米酒ながらマスカットのような吟醸香がくっきりと立ちのぼります。透明感のある口当たり。味わいはすそ野からなだらかに盛り上がり、頂点では姿のよい甘みとフラッシュする果実的な酸味が十分に膨らみます。そこから少しの苦味を伴いながら、再びなだらかにキレてほのかな余韻を残します。この溶けやすい米からは重厚な旨味感を予想しますが、逆に、旨味は爽やかにフルーティなもので、バランスよく口中に広がります。これは無濾過原酒ながら15度という低いアルコール度によるものでしょうか。

フクノハナ

フクノハナ(奥羽260号)は奥羽237号と東北76号の交配種で、農林水産省東北農業試験場で1959年に育成されたもので、1966年に命名されました。

麹が難しいと敬遠される米

酒造好適米として昭和45年(1970年)に栽培がはじまり昭和48年(1973年)には出石町でも栽培開始。しかし、水を吸い過ぎ、蒸米が柔らかいため麹にすることが困難なことから使用料は減り、栽培地も減少しました。後に、出石町で石川県の福光屋さんが大切に契約田のみで守ることになりました。現在も出石町だけで栽培され、福光屋さんと太田酒造千代田蔵のみで使われています。(ただし、29BY限定ですが下村酒造店・奥播磨が11月に発売されます)

フクノハナが使いたい

千代田蔵の製造責任者さんによると、この珍しい米を使うのは、「フクノハナが好き」という理由で、フクノハナありきのなかでいろいろな酵母を合わせてみた結果、「明利酵母が最も相性がよい」ということで、現在の組合せになっているようです。

昭和37年灘に千代田蔵誕生

蔵のすぐ前には港

太田酒造は滋賀県草津市に本拠があり、草津市に「道灌蔵」と「不盡蔵」を持ち、さらにワイン醸造の琵琶湖ワイナリーの他、ブランデー、焼酎、リキュールも手がける「日本一小さな総合酒類メーカー」というお話です。ブランド名「道灌」の由来となる太田道灌を祖先に持ち、江戸末期に醸造開始、明治7年に創業しています。
昭和37年(1962年)には現在地に「念願であった」灘・千代田蔵を建設。以来半世紀余りにわたって灘魚崎郷で酒造りを行っています。灘五郷酒造組合はもちろん灘酒研究会にも加盟し、「灘の生一本」プロジェクトにも参加しています。2018年は「フクノハナ」と明利酵母という同じ組合せで出品されています。なお、仕込水は六甲山の伏流水を井戸で汲み上げるもので、「宮水」は使っていません。

独自の発展

杜氏はおかず社員酒造責任者という型ですが、流派としては能登杜氏に属しておられるようで、このあたりは滋賀県らしいところ。一方、蔵人さんは各蔵でのローテーション(人事異動?)などはなく、千代田蔵の勤務となるとずっと千代田蔵におられるそうです。本社で千代田蔵のお酒を受注すると、本社に送って販売はするそうですが、千代田蔵では草津で造ったお酒を販売することはないそうです。
確かに、「滋賀地酒の祭典」のブースで千代田蔵のことを尋ねても、「よく知らない」というのはこうした事情によるもののようです。

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