木下酒造「玉川 自然仕込 純米酒(山廃) 24BY VINTAGE」24BY京都府京丹後市

京都府の日本海沿い、久美浜湾に面する木下酒造さんの熟成酒「玉川 自然仕込 純米酒(山廃) 24BY VINTAGE」です。唯一の外国人杜氏、Philip Harperさんで有名ですが、人気の由縁はもちろんそれではなく、造り出すお酒の独自性に溢れた展開にあります。
玉川 自然仕込 純米酒(山廃) 24BY VINTAGE 720ml  1,620円

[Tamagawa junmaisyu yamahai 24BY Vintage] Brewery:Kinoshita Brewery, Kyoto pref, Kyo-tango city, Specific designations:Junmai-shu, Variety of raw rice:Hyogo-kitanishiki, Degree of rice polishing:66% Pasteurize:pasteurized ,Yeast:orijinal natural aspiration ,Yeast starter:ýamahai-moto method, Alc%:15-16% Fragrance: aroma , Taste:rich

独自性を表現する代表酒

二つの特徴を持った、木下酒造を代表するお酒です。一つは酵母無添加の山廃酛ということ。もう一つは平成24酒造年度から5年の常温熟成期間を経ていることです。原料米は全量兵庫北錦を66%精米したもの。アルコール度は15度以上16度未満となっています。仕込水は蔵の後背にある城山の湧き水となっています。兵庫北錦は五百万石と灘誉の交配によって生まれた兵庫県開発の早生品種です。無濾過で加水・火入れの後、貯蔵されています。

冷から燗まで温度を変えて味わい尽くす

厚く塗られた壁が温度変化を抑制する木造蔵

このお酒の楽しみの一つは温度軸であり、様々な温度での味わいの変化です。
まずは、わずかに冷やして試してみます。香りは清廉なもの。純米酒ですが吟醸香の趣さえ感じます。きめ細かな口当たりは山廃ならではで、まろやかな酸と蜜を感じる甘味が一体となって、まるくめぐりながら包み込むように広がります。熟成でありながらフルーティな印象さえあるのは酸の性質でしょう。
次に、「通常よりも高い温度の燗」という蔵のお勧めに従い、57度で試してみます。酸と甘味のバランスは変わりませんが、重みがフワリととれて、輪郭を解き放ったやわらかな旨みが口の中いっぱいに膨らみます。熟成酒としては軽快な味わいで、常温熟成にしては雑味感も少なくクリアで、色沢もほのかな琥珀色の色づきです。いずれも、端々にわずかな苦味をもたせながら心地よくキレ上がります。
「玉川の酒は少し温度を変えて飲むと驚くほど違う表情を見せ」るということですが、姿かたちを崩すことなく、どの温度でもそれぞれの楽しみを与えてくれました。熟成には燗というのが一般的な適性ですが、いやいや、冷(常温)より少し冷やしたあたりの流麗な深みにはまりそうです。

時間軸の変化を楽しむ土台がある

木下酒造では二つの楽しみ方を提起しています。一つはさきほどの温度軸であり、もう一つは時間軸として熟成に関わるものです。これは上槽から貯蔵、蔵出しまでの熟成とともに、購入後の家での熟成も含むというもので、通常は否定される家内での常温熟成さえも容認しています。これにはこの酒蔵独特の酒造りの哲学とプロセスがあります。

アルコール耐性に優れた家付き酵母

「丹後天酒まつり」では大勢の参加者を迎える

この「自然仕込」と称する家付き酵母を使う酵母無添加の山廃酛という手法は、平成19年(2007年)に赴任したPhilip Harper杜氏が持ち込んだもの。この酵母は「単一ではなく、複数の種類の酵母が存在している」もので、その特徴は「発酵力が旺盛で、とりわけアルコール耐性の強い酵母。そのおかげで、高いアルコール度の原酒を造ることができる」というお話でした。通常は18度あたりから酵母が死滅しますが、こちらでは「20度を超えて22度でも旺盛に発酵を続ける」そうで、この蔵のバリエーションの展開に寄与しているようです。

常温熟成-この環境に育ててもらう

常温熟成される貯蔵タンク

ラベルには「長期熟成」と表示されていますが、このお酒は5年となっています。熟成は「第二の醸造」と言われますが、この蔵は大半が常温熟成となっています。これは「冷蔵管理で一定の温度にすると、地域や場所がどこであろうと環境条件は同じ」になるので、「京都府京丹後市久美浜町甲山という村の一角の環境に、玉川を育ててもらう」という発想から、あえて常温としています。このベースには「玉川は丈夫な酒。すなわち熟成を楽しめる酒、傷みにくい酒」という自信があり、「玉川は“変化が面白い”酒です」というこの蔵の特徴を表現するフレーズになっています。
別の面から見ると、Philip Harper杜氏が以前に言っておられた「日本酒業界は付加価値を付けるのが苦手」であり、「熟成は生かすべき武器」という戦略から生まれたものでもあるようです。

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