沢の鶴「生酛造り 純米大吟醸原酒 瑞兆」28BY 兵庫県神戸市

灘五郷の最西、西郷に蔵を構える大手メーカー、沢の鶴さんの「生酛造り 純米大吟醸原酒 瑞兆」です。平成29年11月製造。沢の鶴の高級酒のなかでは比較的リーズナブルな値段です。

生酛造り 純米大吟醸原酒 瑞兆 720ml 3,500円(税抜き)

[Zuicho kimotozukuri junmai-daiginjo gensyu ] Brewery:Sawanotsuru Brewery, Hyogo pref ,Kobe city, Specific designations:Junmai-daiginjo-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki, Degree of rice polishing:47%  Pasteurize:pasteurized ,Yeast:unknown ,Yeast starter:kimoto-method, Alc%:17%  Fragrance:apple, Taste: rich

生酛、純米、吟醸は沢の鶴らしさ

四季醸造蔵「瑞宝蔵」の設備。この酒の醸造蔵ではありません

原料米は兵庫県産山田錦。沢の鶴は特A地区である三木市吉川の実楽地区に契約田(村米)を持っています。仕込水は宮水。精米歩合は47%。酒母は生酛で、酵母は自社酵母SK-33ではなさそうで協会酵母、おそらく1801号あたりかとは思います。原酒ですが、アルコール度は17度と若干低めです。酸度は1.5、アミノ酸度は1.1。日本酒度は+3.0となっています。灘でも生酛を看板にするのは、生酛の総本山「菊正宗」、95%が生酛造りという「白鷹」とこちらくらいでしょう。

際立つ鮮やかな姿が印象的

はっきりしたリンゴの香りが華やかに立ち上がります。際立つ鮮やかさが印象的。生酛らしいキメ細かで滑らかな舌触りに乗って、最初に感じるのは綺麗な甘味。次いで酸味が、さらに辛味、苦味、渋味がそれぞれの色彩をもって鮮やかにめぐり、味わいを深めながら美しいキレ味に終焉します。姿かたち、骨格がはっきりしたお酒です。女優に例えるならブルック・シールズ。蔵の紹介文は「味吟醸」「まろやかなふくらみと奥行きのあるコク」ですが、豊かな質感とシャープな輪郭がさらに深いコクに昇華するお酒と感じました。

純米酒のトップメーカー 純米で鑑評会連続金賞

純米酒にこだわりのある蔵で、純米酒の売り上げは日本一ということです。全国新酒鑑評会でも純米大吟醸で平成27、28酒造年度に2年連続の金賞受賞という実績をもっています。毎年220~230本の金賞のうち、純米は4~5本という困難さです。大吟醸とともに純米大吟醸の出品用酒も毎年仕込んでいるそうですが、出品酒を選択するときに純米を選ぶのは決断がいることで、27BYはできがよかったということで出品し、首尾よく金賞となったものの、28BYは「さすがに連続はどうかと思っていた」ということです。乾蔵の大吟醸と瑞宝蔵の純米大吟醸の両方が2年連続の金賞ですが、大吟醸の金賞受賞酒は販売される一方、純米の方は販売には回っていません。

もうひとつの「瑞兆」も

レギュラーの大吟醸には「大吟醸 瑞兆」もあります。実はこちらも純米大吟醸で精米も同じく47%。加水調整はされていますが、アルコール度は16.5度とほとんど変わりません(日本酒度0、酸度1.7、アミノ酸度1.2)。価格は2,000円とかなり違いますが、この値段の違いは「販売戦略的に低価格にしている」そうなので、こちらも狙いかも知れません。

「※」を印にする伝統蔵の様々な革新

阪神淡路大震災後に再建された沢の鶴資料館

享保2年(1717年)創業。元々は大坂で米屋を営んでいたということですが、業態としては「札差」、つまり各藩の蔵米を貨幣に代える商売だったと思います。屋号はズバリ「米屋」で商標は「※」と老舗感たっぷりですが、一方で、進取の取り組みにも積極的で、特定名称酒制度に変更を迫った「米だけの酒」や低アルコール酒「SHUSHU」もそうしたものの一つでしょう。
ところで、「『手に入りそうで、意外と手に入らない』のが、沢の鶴のお酒です」と自ら認めて、その理由は「私たちが生産量や安売りを求めず、良い材料で昔ながらの伝統的な造り方を守り続けてきたからです」と宣言しています。実際にパック酒ばかりが目につきますが、このあたりは「もっと良い酒があるのだから、もっとがんばれ」というのが、地元、神戸市灘区に多い「沢の鶴ファン」の心の声かもしれません。

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