菊正宗酒造「2017限定 可惜夜(あたらよ)」2017CY 兵庫県神戸市

灘・御影郷の名門、菊正宗酒造さんが2017年11月6日に300本限定で発売した「可惜夜」です。「謎に包まれた新しい日本酒」というフレーズ。4合瓶で3,240円という遠慮のないお値段。今年度限り。今後、レギュラーにする予定もないようです。わけがわかりませんが、飲まずにはおれません。平成29年11月製造の火入れです。28BYか29BYかも不明なのでCYとしました。
2017限定 可惜夜(あたらよ)720ml 3,240円

[2017 atarayo] Brewery:Kikumasamune  Brewery  Hyogo pref, Kobe city, Specific designations:no, Variety of raw rice:Yamadanishiki, Degree of rice polishing:unknown ,pasteurize:pasteurized  ,Yeast:unknown ,Yeast starter:unkown, Alc%:16%  Fragrance:apple   Taste:dry but fruity

”研鑽を重ねた最先端”は地味に革新的

北野恒富(1880~1947)作 菊正宗酒造記念館所蔵

このラベルは菊正宗記念館が保有する北野恒富作の大正時代を代表する美人画。この名画をラベルにした、「それほどの自信作は菊正宗の歴史を凝縮したこだわりの逸品に仕上がっており、製法は企業秘密」「358年培ってきた技術を礎とし、研鑽を重ねた最先端」というもの。酒質、精米歩合は非公表。酒母も酵母ももちろん非公表。表示は必要記載事項であるアルコール度16度と兵庫県三木市吉川「嘉納会」特A地区産山田錦100%使用ということのみ。純米酒で吟醸酒の香味であることは間違いないですが、特定名称表示はありません。コンセプトは「魅せる菊正宗」。「今までの技術に慢心せず、新たなワザで皆様に喜びをもたらしたい」というもの。いったい何なのでしょうか。

ドライな発泡感と美しい果実感

菊正宗 宮水井戸

これは旨い。けれども意外なお酒。菊正宗の酒を知る人ほど驚くでしょう。
香りは透明感のある豊かな吟醸香。まずはごく微細ながらもはっきりとした発泡感が舌先を刺激します。開栓後3日でもこれが残ります。火入れや濾過も(両方か、もしくは濾過のみ精密あるいは限外濾過か)おそらくされていると思われるのに、どうしたことでしょうか。この発泡感がドライな口当たりを与えます。続いて口当たりからくもりのない果実的な酸味がスッとストレートに流れます。これと合わさったクリアーな甘味がフルーティーな旨味とボリュームを生んで流れに乗ります。口中であれこれ複雑に動くことのない鮮かな光速の味わいが一気に差し切ります。キレはホロりとした苦味。後を引くことなく、余韻のみを残します。(開栓数日で発泡感が弱くなり、甘味が表立ってきました。早めに飲みきる方がよいようです。)

心のままに・・詮索は無粋ながら・・やはり考える

菊栄蔵の火入れタンク

「心のままに、無垢なる味わいを妨げぬよう 造りの詳細は非公開といたしました」とされているので、詮索するのは無粋ですが、一方で「358年培ってきた技術を礎とし、研鑽を重ねた最先端」と言われれば、あれこれ考えてみたいのが人情です。ここ数年を考えても、「キクマサHA14酵母」の開発。昨年には速醸の「百黙」の発売とダイナミックに展開していますが、キクマサHA14酵母は低精米でも十分なカプロン酸エチルと、とりわけ酢酸イソアミルが高生産になるのが特徴。しかし、特A山田錦を使ったこの値段で低精米ということはないでしょう。一方の百黙は香気の高い酵母に速醸というもの。このお酒は百黙の流れのなかにある吟醸酒であることは間違いないとは思いますが、さらにボリュームのあるフルーティな味わいの要因と発泡性を生み出す技術が不明なところです。いずれ明らかになるでしょうか。
今年は社長も第12代嘉納治郎右衛門氏に交代するなど、様々に変化の兆しが表れており、菊正宗から眼がはなせません。

なお、「可惜夜(あたらよ)」のネーミングは「あたら夜の 月と花とを 同じくは あはれしれらむ 人に見せばや」(源 信明 後撰和歌集)から。

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