梅乃宿酒造「奈良流五段 露葉風 純米吟醸」28BY 奈良県葛城市

奈良県と大阪府の境界、葛城山系の東に位置する梅乃宿酒造さんの「奈良流五段露葉風 純米吟醸」です。奈良県の奨励品種である露葉風(つゆばかぜ)を使い、江戸時代初期の五段仕込みで仕込んだお酒。平成29年9月製造の火入れ酒です。
奈良流五段 露葉風 純米吟醸  720ml 1,400円(税抜き)

[Nararyu-5dan tsuyubakaze junmai-ginjo ] Brewery:Umenoyado Brewery, Nara pref  Katsuragi-city, Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Tsuyubakaze, Degree of rice polishing:60%  Pasteurize: pasterized  ,Yeast:unknown ,Yeast starter:unknown, Alc%:17%  Fragrance:fruits, Taste: sweet and sour,rich

日本酒度-20、酸度3.5

酒米は全量奈良県産露葉風。と言っても奈良県以外ではつくられていません。精米は60%。アルコール度は17度、日本酒度-20、酸度3.5、アミノ酸度2.7となっています。酒母、酵母は不明、醪は名前どおりの奈良流五段仕込み。上槽はヤブタかと思います。

ザラリとした甘味と貫く酸味の相乗

秋田杉で作られた麹室

なんと言っても、口当たりにふくらむ十分な甘味、そしてたっぷりと広がる濃厚な酸味が特徴。食前酒として味わいたい。
日本酒度-20なので甘味が強いのは当然ですが、ザラリとしたくどさのない甘味です。フルーティと言える酸味が全体を覆いますが、甘味の肌理の粗さとこの酸がピッタリ合って濃醇ながら爽やかな味わい。後口に酸味を比較的長く残しがら、ほのかな苦味や渋み、辛味が舌奥に点在して、これが良好な締まり感となりました。純米吟醸ですが、香りで飲ませる吟醸酒ではありません。上立香はほのかながらはっきりした果実系のさわやかな香りです。口中香では香ばしい香りがわずかに混じります。

露葉風と奈良流五段仕込みの意味は

露葉風

露葉風は昭和38年(1963年)に「白露」と「早生双葉」の交配により愛知県で誕生、酒造好適米として登録されたもので、奈良県で唯一の「奨励品種」となりました。しかし、平野部での栽培に適さないことや山田錦など酒米に押されて、昭和57年には栽培が途絶。これを平成14年に復活したもので、現在は奈良県のいくつかの酒蔵で商品化されています。

奈良流五段仕込み

一方、奈良流五段仕込みは、現在に至る酒造りの各流派の起源となる奈良の酒造りに由来したもので、「江戸時代初期の技法『奈良流』を復活」させたもので、醪を「五段仕込み」で醸したものとなっています。この五段の実際を尋ねたところ、「初添え、踊り、仲添え、留添え、留添え、留添えの五段」というお話で、後半3段の留添えは間隔を空けずに3日間で仕込むとのことでした。26酒造年度までは「生酛純米 無濾過生原酒」で販売されていましたが、吟醸に変わるとともに「生酛」の表記も無くなりました。実際には「生酛」だという話も聞きますが、江戸時代初期ではまだ生酛造りの技法は確立されておらず、生酛的ではあるものの、より原初的な酒母なのではないかと想像します。酵母は不明です。

自然のままに、温度調節をしない

さらに、「温度調節はせずに、自然の気温変化にまかせた」ということ(昨今の気候を考えると冷却しないのではないか)で、現代においては覚悟の必要なことですが、これはより古来の酒造りに近づける試みで、五段で仕込むメリットはこのあたりにあり、お酒の特徴もここに由来するものと考えます。

9月から杜氏制度廃止

酒母質。生酛用には酛摺り用の別室があります。

明治26年(1893年)創業と比較的新しい蔵です。昭和54年(1979年)には自社ブランド中心に移行。平成7年(1995年)に但馬杜氏・石橋鉄男氏から南部杜氏・高橋幹夫氏に。平成22年(2010年)に南部杜氏・北場広治氏に移行。平成29年(2017年)9月に北場杜氏が転出され、以後は杜氏制度を廃止、醸造責任者が全体を管理する体制となりました。但馬杜氏時代には現木下酒造杜氏のフィリップ・ハーパー氏も在席され、南部杜氏移行後も但馬流と南部流を融合させた酒造りを進めたそうで、酒質にもその面影が残っているように感じます。精米も自家精米で、県内でも1,2の大手で人気も高い酒蔵です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA