明石酒類醸造「明石鯛AKASHI-TAI 純米吟醸」27BY 兵庫県明石市

兵庫県明石市の明石海峡大橋を望む大蔵海岸にある明石酒類醸造さんの「明石鯛 純米吟醸」27BY。平成29年4月製造です。全国的には無名の小さな蔵ですが、兵庫県内でもほぼ無名です。というのは、この蔵の主戦場は海外市場、特にヨーロッパ市場だからです。

明石鯛 純米吟醸 720ml 2,500円(税抜き)

[Akashi-thai Junmai-ginjo-shu ] Brewery:Akashi syuruijozo  Brewery Hyogo pref Akashi city
Specific designations:Junmai-ginjo-shu, Variety of raw rice:Yamadanishiki, Degree of rice polishing:58%  Pasteurize:pasteurizes  ,Yeast:unknown ,Yeast starter:sokujo-moto method, Alc%:15%  Fragrance:fluets, Taste: rich and sour

爽やかながら、肉にも負けない力強さ

山田錦らしい美しい甘味がベースながら酸味を強く感じます。これと相まって、熟成酒の香り。端的にはナッツ的なメラノイジンやソトロンの香りです。しかし、これがひつこくなく淡い感じにかぶさるところが際立った特徴です。普通の熟成酒のようなこってりと濃厚なものではなく、あくまで爽やかで鮮やかな切れ味が「まろやかな旨みのある辛口酒」「後口がすっきり」というラベルの表示を納得させます。1年熟成が「常温熟成かな?」と思わせる複雑な味わいの出方ですが、この甘味・酸味・苦味・熟味が絶妙にバランスして、肉料理にも負けない力強さも併せ持っています。さすが、西欧で勝負しているお酒の面目躍如でしょうか。

スウェーデン輸出用の純米吟醸酒

このお酒はスウェーデンで販売されています。国内では酒蔵の直営店「酒笑本館(しゅまいるほんかん)」で不定期に販売されるもの。国内向けカタログにはありません。純米吟醸の4合瓶で2,500円はけっこうなお値段ですが、米は兵庫県特A地区産の山田錦と原価はかかっています。精米歩合は58%でアルコール度は15度です。酒母は速醸で酵母は不明ですが、そんなに特徴的な酵母は使っていないでしょう。醸造から火入れして1年熟成してから出荷しています。

AKASHI-TAIはなぜ、早々と海外市場に

直営店 酒笑本館 土日祝は休みです。

幕末の安政7年(1860年)に創業。元は明石駅の西側、明石警察署の近くにありましたが、平成21年(2009年)に現在地に移転。明石海峡大橋が間近に見える立地ですが、マンションと撤去自転車の返還所の間という酒蔵がありそうな雰囲気の場所ではありません。
こちらの蔵の特徴と言えば、海外向け商品が主流であるところ。特A地区の山田錦を使いますが、これを80%精米した純米酒があります。現在はドイツを中心に販売され国内販売はなし。さらに山田錦の玄米酒。100人中5人がおいしいと評価するというもので、熟成して出荷されますが、これはイギリスとインドで人気になっています。国内販売はありません。
さて、こうしたお酒を造り始めたのは、吟醸ブームに乗り遅れたなかで、味の多様性を求めた新たな価値創造でリーディングカンパニーをめざしたためです。ただし、国内では受け入れられませんでした。「変な味がする。痛んでいるんじゃないか」とクレームの嵐だったそうです。そこで、日本酒の味に先入観のない海外で、自分たちの酒を問うてみようと海外展開に舵を切ります。現在はイギリスを中心にノルウェーやカナダにも輸出して高い評価を得ています。クイーンエリザベス号などキュナード社が運航する豪華客船で供される日本酒はすべてAKASHI-TAIです。ただし、純米大吟醸など吟醸酒が多いとは思いますが。
現在ならばこうした多様性が受け入れられる素地もありますが、10年20年前には難しかったでしょう。そうしたなかで、無謀な挑戦に打って出た小さな酒蔵があることに兵庫の酒造業界の層の厚さを感じます。なお、蔵のコンセプトは「伝統と革新」「日本のアイデンティティー」「すべての人に酒と笑いと幸せを」です。

後日談

よく行く日本酒バーのマスターが1本仕入れて試飲したところ、「これはないやろ」という感想。そうしたところ、あるお客さんが注文。「こんな旨い酒は飲んだことがない。他の酒など飲めるものではない」と全て飲み切ったそうです。

兵庫県明石市大蔵八幡町1-3
山陽電鉄大蔵駅から徒歩可能な国道2号線沿い。

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