正暦寺 菩提酛清酒祭 平成29年1月9日 奈良県奈良市

_菩提酛発祥の地、奈良市の正暦寺で毎年開催される菩提酛清酒祭です。今年で19回目になります。今日ここで仕込まれた酒母を8つの蔵が持ち帰り、この酒造年度の菩提酛仕込みの清酒を醸します。

It is the Bodaimoto Sake festival held every year at Syouryaku-temple in Nara City, the birthplace of bodaimoto. It is the 19th time this year. Eight brewery stores brought back the syubo(yeast starter) that was put on today and brew sake of the bodaimoto of this brewery year. Bodaimoto is a method of brewing sake in the 15th – 16th century. This sake is characterized by strong acidity and sweetness.

「そやし」という独特の工程

2日前から仕込まれた「そやし水」

_蒸米に先立って、精米された米を「生米」と「ごはん」つまり炊いた米を9:1の割合で、正暦寺裏山から湧出する清水に漬けます。2日間の時間を使って水の中の正暦寺乳酸という独自の乳酸(Lactococcus lactis subsp.lactis)が、ごはんの糖分と生米のα-glucosidaseを使って様々に菌叢を変化させながら乳酸酸性水である「そやし水」となります。これを酒母に投入することによって、雑菌を淘汰して安全に酒造を行うという技法が確立しました。これが菩提酛仕込みです。言わば、速醸酛の先駆けとなった手法が、早くも15世紀にここ正暦寺で開発されていたことはまったく驚くばかりです。
_今回使われた米は地元で栽培されたヒノヒカリで、精米は70%にしたとのことで、352㎏の精白米が使われています。

 

そやしに使った生米を蒸米

「そやし」に使った生米を甑で蒸す

_そやし工程に使われた生米を甑で蒸米します。そやし工程で乳酸酸性水に漬けられていた米を蒸すため、通常の蒸米とは異なった香りがあたりに満ちます。もっとも、露天での作業になりますので、それほど強烈ににおうわけではありません。この蒸米の作業が「菩提酛清酒祭」のメインの作業になります。この時点で、他の材料である麹米は用意されています。
_甑の上の天幕の部分は蒸きょうが進むについれて、膨れ上がって球面になってきます。
_この作業は、「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」に参加する酒蔵から派遣された十数人のメンバーによって行われました。

酒母の仕込みへ 酒母の完成までに7日間

甑から切り出される蒸米

_蒸し上げられた米は、スコップで切り出されてすぐさま、敷かれたむしろの上で放冷されます。適温に放冷された後に、用意されたタンクで酒母が仕込まれ、7日後に完成。各酒蔵が持ち帰って醪の仕込みを行います。菩提酛の酒母は今日仕込まれた1本のタンクのみで、今年は昨年から一つ減った8つの酒蔵で菩提酛づくりの酒がはじまります。それぞれの蔵でのスケジュールはおよそ3月に飲み切りを行って経過を測り、4~5月くらいに蔵出しとなるようです。
_なお、酒母の仕組みも独特で、底にごはん5合と麹5合を混ぜたものを敷き詰め、中間は「そやし水」1斗と麹4升、蒸米9升が入り、最後にごはん5合と麹5合を混ぜたものがばらまかれるというものです。
酵母は正暦寺で採取された野生酵母を協会7号酵母をプロトプラスト融合することによって改良されたものとなっています。

合計すると、菩提酛の仕込み配合は
ごはん1升 蒸米9升、麹5升、水1斗になります。

菩提酛の再発見とプロジェクトの開始

蒸米を手作業で放冷

_関西大学の小野晃嗣博士は室町時代に著わされた「御酒之日記」に菩提酛あるいは菩提泉の記述があることを発見しました。後の「童蒙酒造記」にも菩提酛の記述があります。しかし、これは地元奈良の酒造現場でさえ認識されることがなかった。奈良市の安川酒造の先駆的取り組みの後、平成8年(1996年)7月に奈良県の若手酒造家を中心に「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」が県工業技術センターや正暦寺を賛助会員に迎えて発足。手法としての菩提酛づくりではなく、当時の再現としての菩提酛づくりを目指したゆえの困難を乗り越えて、平成10年(1998年)に再現に成功しています。
_なお、「再現」の内容は

①酒母は正暦寺において生産すること。②酒母の製造過程において生米を使用すること。③乳酸は絶対に添加せず、「そやし水」という乳酸酸性の。水を使うこと。④菩提山正暦寺由来の、奈良県工業技術センターで分離した正暦寺乳酸菌を使うこと。⑤育種改良した正暦寺酵母菌を使うこと。⑥寺領の米と水を使うこと。⑦最適な麹菌を使うこと。(以上「醸造タイムス 2000年4月28日号)

とされる。

この1本の酒母タンクから各社の今年の菩提酛酒が造られる

_当日は酒の試飲や販売(各社とも1,600円)も行われました。かす汁やおもちのサービスも。交通不便な立地なため大量の人出というわけではないですが、ハイキングのような方々も含めそこそこ集まってました。駐車場は9時では余裕。10時には満車に近い状態でした。

日時 2017年1月9日(月・祝) 午前10時から午後1時
交通 窪之庄南バス停から正暦寺まで送迎バスがピストン輸送

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